リリイ・シュシュのすべて
(2001年 日本 146分)
2007年7月14日から7月20日まで上映 ■監督・原作・脚本 岩井俊二
■音楽 小林武史
■出演 市原隼人/忍成修吾/蒼井優/伊藤歩/勝池涼/五十畑迅人/郭智博/田中丈資

■オフィシャルサイト http://www.lily-chou-chou.jp/

人は生きているだけで他人を傷つける。無垢なまま生きていくことは自分を傷つける。傷つけない方法は存在しない。傷つかない方法も存在しない。そんなこと誰もがわかっている。そのジレンマで悩み苦しむ。

青々とした美しい田園が広がる地方都市。蓮見雄一は小さな美容室を経営する母と暮らしている。しかし、新しい父親とその連れ子の弟が来たことで家に居心地の悪さを感じていた。

春。雄一は中学の入学式で新入生代表を務めた星野修介と剣道部に入ったことで仲良くなる。星野は勉強もスポーツも出来る非の打ち所の無い男だった。ある日、星野の家に泊まった雄一はそこでリリイ・シュシュのことを教えてもらう。

夏。沖縄旅行で夏休みを満喫する少年たち。最初こそ楽しかった旅行も、星野は二度も危険な目に遭い、また途中で知り合った男の事故と、旅行の最後は不穏な空気が立ち込めるものとなってしまった。

そして新学期。ある事件をきっかけに星野は変わってしまった。そして雄一への執拗なイジメがはじまった。

pic学校にも、家にも、どこにも居場所がなくなり、ただただ息苦しい毎日。そんな雄一の最後の心の支え、それはリリイ・シュシュと彼女の作り出す音楽。部屋に閉じこもり、自身の主宰するリリイ・シュシュのファンサイト「リリフィリア」の中だけが雄一の安息の場所となっていた…。

岩井俊二の作戦はとても巧妙だ。人は心に痛みを抱えて生きている。いつもはそれを隠し平然な顔をしている。もしくは忘れたふりを続けている。岩井俊二は、そこに至る完全な道は教えず、ヒントだけを与え、その痛みの入口まで巧みに誘導してくる。そうすることによって、昔の痛みの記憶を呼び起こさせる。不思議なことに、人は記憶を呼び起こさせるモノに価値を与える。

映画と自分の過去がリンクすることで、昔の痛みが、空気が、時間が、生々しく甦る。二度と戻りたくない場所なのに、その場所を確かに覚えている。まるで治りかけのかさぶたを剥がしてる感覚。痛いと解っているけれど、どうしても剥がすことが止められない。血が滲んで、傷が痛む。ちゃんと自分は傷ついている。そんなことを再確認させられる映画だ。(縞馬)



このページのトップへ

花とアリス
(2004年 日本 135分)
pic 2007年7月14日から7月20日まで上映 ■監督・脚本・編集・音楽 岩井俊二
■出演 鈴木杏/蒼井優/郭智博/相田翔子/阿部寛/平泉成/木村多江/坂本真

■2004年日本映画プロフェッショナル大賞
主演女優賞(蒼井優)

冬の朝の凛とした空気。
春のうららかな陽射し。
初夏の緑を濡らす雨。

なんてことない日常の風景。だが岩井俊二の手にかかると別世界の趣を見せる。スクリーンに映し出されるのは、美しい光に満ちあふれたイノセントワールド。ようこそ、『花とアリス』の世界へ!

恋するがゆえについてしまった嘘。嘘から芽生えた恋心?ひょんなことから奇妙な三角関係は始まった。

「じゃあ、私に告白したことは覚えてる?」

荒井花(ハナ)にとっては千載一遇のチャンスだった。駅のホームで一目惚れしてからというもの、ずっと恋焦がれ続けていた先輩男子・宮本雅志(宮本)。その彼が目の前でガレージのシャッターに頭をぶつけて気を失ったのだ。ハナはその機に乗じ、ぶつけたショックで記憶喪失になってしまっていると嘘をつき、自分が今カノだと宮本に思い込ませた!

「振り返ると君はナメクジなんだ…」

宮本はもとよりハナの言うことには懐疑的だった。だって、ハナはどちらかというと自分から好きになるようなタイプではなかったから。でも、元カノだと紹介されたアリスのことを考えるとドキドキもしてしまう。この気持ちが失った記憶の欠片だとすれば、記憶喪失という話も信じられる。もうなにがなんだか…宮本は混乱していた。

「これ、覚えてる?はじめてキスした場所。」

pic有栖川徹子(アリス)にとってハナは無二の親友。登校するのもバレエ教室に通うのも一緒だ。そんなハナのたっての頼みとあれば、宮本の元カノ役だって引き受ける。宮本と二人で会うのだって言うなればハナのため。ただそれだけのはずだった…。

二人の少女を演じるのは、映画のみならずテレビや舞台と様々な分野に活躍の場を広げる若手実力派女優鈴木杏、『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をはじめ数々の賞を総なめにした記憶も新しい蒼井優。

こぼれるような笑顔から崩れるような泣き顔まで、どれをとっても自然体。二人の演技には等身大という言葉が実に相応しい。中高生といえば大人への階段を上る多感な時期。特にアリスに関して言えば、降りかかるのは恋の試練だけじゃない。ハナの恋の行方はもちろんのこと、成長していくアリスの姿からも目が離せない。

捉えどころの無いふわふわした雰囲気の美少年・宮本役には、『リリイ・シュシュのすべて』に続く岩井作品出演となる郭智博。さらには、平泉成からルー大柴まで、個性豊かなキャストが虹色の彩りを加え、まばたきするのが惜しいくらいの完成度だ。

「あの名シーンをもう一度スクリーンで観たい!」という声を数多く集め、「第三回ドレミる?シネマ」堂々のリクエストNo.1に輝きました。

この機会にぜひ劇場へお越しください!(タカ)




このページのトップへ