ブレス
BREATH
(2007年 韓国 84分) R-15
2008年12月13日から12月19日まで上映 ■監督 キム・ギドク
■出演 チャン・チェン/チア/ハ・ジョンウ/カン・イニョン/キム・ギドク

■オフィシャルサイト http://www.cinemart.co.jp/breath/

幸福の記憶すらない人生、何度も≪息≫を絶とうとした。その時、彼女に出会った。死刑までの残りわずかな≪息≫を、分かち合いたくなった…。

「ハンソン刑務所に収監中の死刑囚チャン・ジンが今朝7時頃、再び自殺を図りました」

執行猶予まで残された時間はあとわずか。それにもかかわらず自殺を企て失敗する死刑囚チャン・ジン(チャン・チェン)の元に、見知らぬ女が訪ねてくる。

女は、夫の浮気発覚により深い孤独の闇に落ちた平凡な主婦ヨン(チア)。余命わずかの彼に彼女がプレゼントしたのは、原色に満ちたまぶしい四季の風景と歌だった。

戸惑うチャン・ジンだが、彼女の存在によって<天国>の温もり、“人を愛して生きたい”という強い願望が目覚めていく…。だがそれは、望んでいた“死”が<地獄>の恐怖へと変わっていく始まりでもあった――

反韓流 愛のカタチ

キム・ギドク、もはやアジアを越え、世界的映画監督としての地位を不動のものとした感があるが、その飽くなき探究心はとどまることを知らない。彼の映画を人格化するとしたら、それは愛そのものだ。しかし、愛という程、定義しにくいものはないのではなかろうか。宗教の中の愛、社会の中の愛、家庭の中の愛、男と女の愛…それは人間が前提的に持っているものとして、それがゆえに暴力的な性質を帯びている。

キム・ギドクは常に様々な愛の形を描いてきた。そして、今回の『ブレス』では、今までで1番ねじれた愛(主観ですが)、ファンタジックな愛を描いている。まるで愛の七変化のような色彩変化には絶望と希望が入り混じり、現実とも虚構ともおぼつかない世界が、愛が、むき出しになる。是非、このむき出しの愛を目撃して欲しい。



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シークレット・サンシャイン
密陽 / SECRET SUNSHINE
(2007年 韓国 142分)
pic 2008年12月13日から12月19日まで上映 ■監督・脚本 イ・チャンドン
■出演 チョン・ドヨン/ソン・ガンホ/ チョ・ヨンジン/キム・ヨンジェ/ソン・ヨンジョブ/ソン・ミリム/キム・ミヒャン

■2007年カンヌ国際映画祭女優賞受賞(チョン・ドヨン)/パルムドールノミネート
■オフィシャルサイト http://www.cinemart.co.jp/sunshine/

心を閉ざした女と、その痛みをただ受け止めることしかできない不器用な男―― ふたりを照らす太陽が昇るまでの、ゆるやかな愛の物語。

幼い息子とふたり、ソウルから亡き夫の故郷である地方都市・密陽(ミリャン)に移り住んだシングルマザーのシネ。不器用だが面倒見のいい地元の男ジョンチャンは彼女に好意を寄せるが、まったく相手にされない。

ある日、シネは最愛の息子を誘拐されてしまう。誰が、なぜ…?悲しみのどん底に突き落とされるシネ。ジョンチャンが差しのべる優しさも拒否し、苦しむシネはやがて別の救いを求めるが…。

ふりそそぐ日差しをどれだけ浴びたらあなたの悲しみは消えてゆくのだろう

最愛の人が突然、目の前からいなくなったとき、その悲しみを救うことができるのは<何>なのか?悲しみが狂気に変わるとき、人はどうすればいいのか――、すべての≪大切な人≫を持つ人々が陥るかもしれない究極のシチュエーションに、毅然としながらも温かく真摯な態度で答えていく。

ヴェベチアを熱狂させた『オアシス』から5年――世界中が奮えた、イ・チャンドン監督の映画美学

イ・チャンドン、この監督もキム・ギドクに比べ、作品数は少ないものの世界的映画監督の1人と言っていいだろう。私も個人的に大好きな監督だ。イ・チャンドンの名が広まったのはおそらく2作目『ペパーミント・キャンディー』。そしてやはりこの監督の映画を人格化するとしたら愛そのもの。ただし、キム・ギドクに比べるとその描き方は全く異なる。

キム・ギドクの愛はあまりに極端なため、その暴力性と非現実性を隠せないが、イ・チャンドンの描く愛は現実の愛よりも現実的なゆえ、逆説的にファンタジー性を帯びている。そしてそのファンタジー性の中に監督的文脈としての優しい眼差しが含まれていることに気付く。優しい眼差しに気付いた我々は絶望の中で芽生える優しい花を感じるだろう。是非、優しい花が咲く草原で風を感じて欲しい。希望という名の。


(アセイ)

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