エターナル・サンシャイン
ETERNAL SUNSHINE OF THE SPOTLESS MIND
(2004年 アメリカ 107分)
2007年10月13日から10月19日まで上映 ■監督・原案 ミシェル・ゴンドリー
■原案 チャーリー・カウフマン/ピエール・ビスマス
■脚本 チャーリー・カウフマン

■出演 ジム・キャリー/ケイト・ウィンスレット/キルスティン・ダンスト/マーク・ラファロ/イライジャ・ウッド/トム・ウィルキンソン

大好きだった人、一緒に過ごした時間、癖、仕草、名前を呼んでくれる声。思い出したくないのに甦る記憶、思い出すたびに苦しくて痛くてつらいから、忘れたい。でも忘れられない。こんな記憶、全部消えてしまえばいい!

「クレメンタインはジョエルの記憶を全て消し去りました。今後、彼女の過去については絶対触れないようにお願いします。──ラクーナ社」

けんか別れした恋人・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)となんとか寄りを戻そうとしていた矢先にジョエル(ジム・キャリー)に届いた最終通告。それなら自分も同じ事をしてやるとばかりに、クレメンタインとの思い出の品(記憶を消す為に必要)を両手に抱えてラクーナ社に訪れた。怪しい医師に言われるままに怪しい機械に身を任せ、目をつぶったジョエル。しかし、ジョエルの脳の中で繰り広げられたのは、クレメンタインと初めて出会った頃の夢のように楽しかった日々や、友達同士じゃ決して触れることができないような切ない思い出の数々だった…。

pic『エターナル・サンシャイン』は、ミシェル曰く「記憶の物語」。 嫌な記憶だけ消してもらえるという設定は、SFぽい感じがしますが、これはむしろすごく良く出来た恋愛映画。 出会って、デートを重ねて、一緒に住んで、何度も喧嘩して、慣れが倦怠を生む。ドラマチックなことなんて起きない。描かれる普通の恋愛は、でも普通だからこそ、切なくて、痛々しい。

目まぐるしく展開する、いかにもミシェルらしいセンスの映像、音楽(特にラストのBECKが素晴らしい!)、また「パラドックスにつながりを持たせるのに苦労した」と語るだけあって、完成度の高いプロットは、一度観た後でも、もう一度最初から観て細部を確認したくなります。ほかの映画ではブサイク呼ばわりされているけど、本作ではかわいいキルスティン・ダンストを始めとした、豪華な脇役が織り成すそれぞれの恋愛模様にもまた、色々と思うところが。

pic生きる上で、過去の記憶は一体何の役に立つのだろう。忘却は前進につながる?それでも、今この自分は紛れもなく過去の記憶の集積で。 消してしまいたい記憶も思い出も感情も、 全て自分を構成している要素なのです。 記憶を失うということは、自分自身を失うこと。 それはとても悲しいことではないでしょうか。

失う痛みを、こんなに切実に描いているにも関わらず、 「また恋がしたくなる」というキャッチは本当でした。 ああ、恋愛って素晴らしい、と思える一本。傑作!おすすめです。

(mana)



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恋愛睡眠のすすめ
THE SCIENCE OF SLEEP
(2006年 フランス・イタリア 106分)
pic 2007年10月13日から10月19日まで上映 ■監督・脚本 ミシェル・ゴンドリー
■出演 ガエル・ガルシア・ベルナル/シャルロット・ゲンズブール/ミュウ=ミュウ/アラン・シャバ/エマ・ドゥ・コーヌ

■オフィシャルサイト http://renaisuimin.com/

仕事も恋愛も上手くいかず、冴えない日々を送っていたステファンは、メキシコで一緒に暮らしていた父の死をきっかけに、母の住むパリへと移り住むこととなった。環境は一変。仕事も見つけてもらい、パッとしない生活ともおさらばできるはずだった。だけど、仕事は思っていたようなものではなかったし、隣に引っ越してきたステファニーに恋をしても、内気な性格だからどうしても一歩前に踏み出すことができない。

せめて夢の中だけでも…

pic想いが募りに募ったステファンはステファニーの夢を見るようになる。夢の中ではステファニーとの恋は完璧な形で進んでいく。思い込みの激しいステファンは、現実でもステファニーと恋人同士だと思うようになり…

ビョークをはじめとする様々なアーティストのPVや、数々のCFにおける独特の映像美で人々を魅了し続けてきたミシェル・ゴンドリー。手作り感溢れる彼の演出は、 観ているだけで思わずワクワクしてしまうものばかり。自ら脚本を手がけたこともあって、ゴンドリーの想像力の豊かさと遊び心が遺憾なく発揮されているのだ。

pic主人公のステファンは監督の分身であり、 劇中繰り広げられる不可思議な夢もやはり彼のパーソナルな部分。この作品を完全に理解できるのはゴンドリー自身だけなのかもしれない。だから、人物の設定がどうとか、物語のつじつまがどうとか、難しいことは考えないで、彼の掌の上で気持ちよく踊ってしまおう。それがこの作品を楽しむための一番のポイントだ。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』では、若き日のチェ・ゲバラ役で骨太な演技をみせたガエル・ガルシア・ベルナルが一転、超キュートな青年役に挑戦。落ち着いた雰囲気のステファニーを演じるのはシャルロット・ゲンズブール。

夢の中ですら仕事や悩みごとで支配されがちなストレス社会。切なくも幸せな気持ちになれるこの物語に身を浸したその夜には、素敵な夢が見れるかも?

(タカ)




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