14歳
第16回PFFスカラシップ作品
(2006年 日本 114分)
2007年9月15日から9月21日まで上映 ■監督 廣末哲万
■脚本 高橋泉
■出演 並木愛枝/廣末哲万/染谷将大/小根山悠里香/笠井薫明/石川真希/香川照之

■オフィシャルサイト  http://www.pia.co.jp/pff/14sai/

14歳ってどんだけ大変なんだろうか。謎の占い師は「14歳で終わる!」と言い放ち、エヴァンゲリオンに乗るのは14歳の彼らだった。この年齢に降りかかるいくつもの難題は、私たちを強くするためにあるのか、私たちが弱すぎるからそう感じるのだろうか。

picどっちにしろ14歳真っ只中の彼らはそんなことを考える隙間もないほど目の前がいっぱいで、そこに突然目の前に、危険なものが現れたら、とりあえず撃退するしかないのだ。「やられる前に、やらなくちゃ。」どんなにいけないやり方でも、それが、自分を守る精いっぱいの方法だから。

「僕はピアノを弾いていれば幸せ。そうすればママも喜んでくれる」「私はバレエをやめたくない。でもママも先生も勉強の合間の遊びにしかならないと思ってる。私はそうじゃないのに」「私はなんでこんな頭が悪いんだろう。責められるばっかりなのも私がばかだからなんだろうか。」

picこんな14歳と向き合うのは、当たり前だけどかつて14歳だった大人だ。あの頃、大人になったらきっともっとラクだと思った。でも、変わったのは服の色だけで、ほんとうの中身はちっとも変わっていなかった。でも自分では変わったなどと思っている。そしてあの頃の自分と同じようにもがいている子供の手をとって、言わなくて良いことを言ってしまったりするのだ。その感情のやるせなさは、とっくに目の前の14歳を通り越して、昔の自分に向けられている。あの頃自分を救ってくれる大人なんていなかったじゃないか、と。

『ある朝スウプは』でPFFアワード2004年度グランプリを受賞した映像ユニット「群青いろ」。今作では廣末哲万が監督・主演、高橋泉が脚本を担当。息が詰まるほどの生々しさはますます加速している。自分をいじめた同級生を自転車で追って背後から木刀で殴りつける場面なんかは、あまりの緊張感にまばたきが出来なかった。加速をつけた自転車を背後から追う、走行撮影による長回し。言葉は無かったはずなのに、そのターゲットにたどり着いた瞬間の「みつけた」という声が確かに聞こえた気がした。

かつて14歳だった大人になって、この映画を観て、14歳の私に肩を叩かれた気分になった。その手に持っているのは、きっとパンドラの箱なのに、「久しぶりに会えて、なんとなくほっとした」みたいな気分になれた自分に少し驚いた。

(リンナ)



このページのトップへ

神童
(2007年 日本 120分)
pic 2007年9月15日から9月21日まで上映 ■監督 萩生田宏治
■原作 さそうあきら
■脚本 向井康介

■出演 成海璃子/松山ケンイチ/手塚理美/甲本雅裕/西島秀俊/貫地谷しほり/柄本明

原作ものを映像化した作品が世に多く出される昨今だが、本作『神童』もその一つ。原作は1997年から1998年まで青年漫画雑誌『漫画アクション』で連載された、さそうあきらの傑作漫画である。

13歳の「うた」は、類まれなピアノの才能を持った「神童」と呼ばれる少女。その父親もまた多才な音楽家だったが、うたが幼いころ行方不明となり、それ以来うたは母親と二人で暮らしている。母親や周囲の大きな期待を背負い、また“球技は禁止、いつも手袋を着用”といった制約に縛られ、レッスンはさぼりがちでピアノを弾く楽しみを失いかけていた。

picそんな中、青果店の息子で音大を目指す浪人生ワオの、上手いとはいえないが素直なピアノの音を偶然耳にし心惹かれたうたは、ワオのいる青果店に通うようになる。ピアノを前に、一緒に時間を過ごすようになる二人。自分にはない互いの才能に惹かれ合い、時には激しくぶつかり、恋人や家族とも違った強い絆がいつの間にか二人の間に生まれていた。そんなある日、うたの体にある異変が起こり……。

天才ピアノ少女、「神童」を演じるのは、本当に14歳なのかと疑ってしまうほどの落ち着いた佇まいを数々の作品で見せ続ける成海璃子。漫画でのうたは小学五年生で、“男勝りな性格で口が悪い”という魅力あるキャラクター。映画版では13歳の中学生となるが、映画におけるうたは、どんなキャラクターとして生まれ変わっているのか。そして、あの清清しい印象を持った成海璃子が、うたをどう演じているのか、非常に興味深い。

picそしてワオ役は、『デスノート』や『男たちの大和』、『ドルフィンブルーフジ、もういちど宙(そら)へ』など話題作に出演、毎作ごとに全く違う人物を演じ、個性を主張しすぎず、かつゆるぎない存在感を放つ、若手人気俳優・松山ケンイチ。「原作を超えようとしなければ映像にする意味が無い」とインタビューで答える姿には、この作品に対する自信と、また俳優として走り続ける自分に対する気負いが見える気がする。

また、国際的に活躍するクラシック音楽界の新鋭たちが実際に出演し、演奏する姿をみせているのも、この映画の見どころの一つ。マリア・カナルス国際音楽コンクール1位を受賞し、エイベックス・クラシックより『印象』でCDデビューをしている三浦友理枝をはじめ、2005年の日本ショパン協会主催のショパンコンクール第1位を受賞している清塚信也は、本作では講師役を演じ、ワオのピアノ吹き替え演奏を担当。また、うたのピアノ吹き替えは和久井冬麦。5歳でウィーン国立音楽大学予備科に入学、名高いコンツェルトハウスでの演奏経験もある若干13歳の少女が、まさに“神童”たる演奏でもってこの映画に風格を与えている。

日本初の本格的クラシック音楽映画。という、発言するにはいささか勇気のいる謳い文句を堂々と掲げたこの映画だが、音楽はもとより、表層的ではない深いところで繋がった人間と人間の絆をじっくり観て欲しい。

(はま)




このページのトップへ