リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
THE ASSASSINATION OF RICHARD NIXON
(2004年 アメリカ 107分)
2006年1月21日から1月27日まで上映 ■監督・脚本 ニルス・ミュラー
■脚本 ケヴィン・ケネディ
■出演 ショーン・ペン / ナオミ・ワッツ / ドン・チードル / ジャック・トンプソン

配給:ワイズポリシー

あまりにも孤独で、あまりにもナイーブなテロリスト。時代の渦中に抹殺された男の真実が、いま明かされる。

pic1974年2月。一人の男がワシントンのバルチモア国際空港に降り立った。彼の名前はサム・ビッグ。彼はある決意を胸に秘めていた。それは、民間の航空機をハイジャックし、ワシントンに向かい、ホワイトハウスめがけて撃墜する。それによりアメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンを暗殺すること…

ショーン・ペン演じるサム・ビッグはとても純粋な男だ。彼は人に嘘をついてまで成功することを嫌う。だがこの世の中で成功している者は、上手く嘘をつける人物なのだ。みんな小さい頃は、嘘をつくな、人を騙すなと教えられているはずなのに、成長するにつれて、周りは嘘だらけでできていることに気付かされる。その上、成功したものは勝者で、成功できないものは敗者の二つにしか分けられない。

誰もが一度はこの問題にぶつかると思う。学校で、職場で、交友関係で、その他多くのことで。「もっと大人になれよ」と周りの人達は言うだろう。汚いことに目をつぶるのが大人になるということなのだろうか。何かが間違っている気がする。

picサムはただ家庭を再生しようと奔走している。しかしそのための手段として、人を騙して商売することに彼は困惑し、傷ついていく。正直者が馬鹿を見るこの世の中、その頂上にいるニクソンを暗殺すことが出来れば、この間違った世界が少しでも変えられるかもしれないとサム・ビッグは考えるようになる。

サム・ビッグをニクソン暗殺にまで駆り立てたのは、彼が純粋な男で、この世界の仕組みが間違っているためだろうか。それとも彼は社会に順応できない駄目人間で、ただ世間を逆恨みしてただけだろうか。その答えはこの映画を見たあなたが判断するべきだろう。

(パンプキン)


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ヒトラー 〜最期の12日間〜
DOWNFALL
(2004年 ドイツ/イタリア 155分)
pic 2006年1月21日から1月27日まで上映 ■監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル
■原作 ヨアヒム・フェスト『ヒトラー 最期の12日間』 / トラウドゥル・ユンゲ『私はヒトラーの秘書だった』
■脚本 ベルント・アイヒンガー
■出演 ブルーノ・ガンツ(『ベルリン・天使の詩』『永遠と一日』) / アレクサンドラ・マリア・ラーラ / ユリアーネ・ケーラー

■2004年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

(C)GAGA communications inc.

目撃者は一人の秘書。彼女の目を通して、ヒトラー最期の12日間の真実が明かされる。

1945年4月20日、ベルリン。迫りくるソ連軍の砲火から、身を守るため、ヒトラーはごく限られた身内や側近らとともにドイツ首相官邸の地下要塞へ退却。女性秘書ユンゲもその中にあって“歴史の証人”となった。

pic史上最も有名な独裁者、アドルフ・ヒトラー。そこから想起するのは、その巧みな弁舌と演説者・政治家としての能力。ナチスという組織とハーケンクロイツの紋章。反ユダヤ主義によるユダヤ人大量殺戮(ホロコースト)。

青年期に画家を志したことがあるヒトラーは、集団生活にはなじめないようなところがあったものの、決して特異な人物ではなかった。独裁者としてのヒトラーが誕生し、反ユダヤ主義に傾倒していった理由は、はっきりとわかっていない。

picヒトラーは、はたして狂人だろうか。人間ではなくまったく別物として彼を捉えることは簡単だろう。しかし、彼は紛れもなく人間である。そして、彼になりうる要素は、きっと誰の中にも存在している。

タブーとされてきた、人間としてのヒトラーを正面から描くということ。そのタブーを破り宿命的な課題に、ドイツ自らが挑んだ『ヒトラー〜最期の12日間〜』。観る人により見解は様々だと思う。けれども、ここに歴史の真実の一端があることは間違いないだろう。

(ロバ)



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