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十面埋伏
(2004年 中国 120分)
2005年4月9日から4月15日まで上映 ■監督・脚本・製作・原案 チャン・イーモウ(『初恋のきた道』 『至福のとき』
■脚本 リー・フェン/ワン・ビン
■アクション監督 チン・シウトン
■衣装デザイン ワダエミ

■出演 金城武/アンディ・ラウ/チャン・ツィイー/ソン・タンタン

(C)2004 Elite Group(2003) Enterprises Inc.

中国・唐の時代。腐敗政治に抗う反政府組織が乱立する中、朝廷を脅かす存在であった反乱軍の最大勢力「飛刀門」の娘と思われる盲目の踊り子がいた。密命を受け接近する二人の官氏。ひとりは素性を隠し娘に近づき、ひとりは追手を放ち娘を仕留めようとする。各々の仕組んだ罠の中で出会ってしまった三人の男女。しかしそれは幾重にも張り巡らされた“謀”のほんの始まりに過ぎなかった・・・。

picアジア全域で大ヒットした『HERO』から一年、中国を代表する巨匠チャン・イーモウが更にパワーアップした大作を完成させた。

豊かな色彩による映像美、華麗なるアクション、ワダエミによる衣装等ヴィジュアルの美しさに息を呑む。しかしこの作品の根底にあるものは、今までチャン・イーモウ監督が多くの作品で取り上げてきた「愛」。

愛する人、愛する物への一途な「愛」が、第三者に対し時に罠となり、時に足かせとなり、あらゆるシチュエーションで襲い掛かってくる。(原題『十面埋伏』とはあたり一面に待ち伏せが潜んでいるという意味。)先の読めない物語の展開もこの作品の見どころの一つだ。

pic金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイーらアジアを代表するトップスターが繰り広げる嘘と誠、表裏一体の世界。物語の先を読みながらの観賞もいいだろうが、是非展開に身を委ね、騙されながら観ていただきたい。極上の映像美に溺れながら。

(マコト)


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春夏秋冬そして春
SPRING, SUMMER, FALL, WINTER... AND SPRING
(2003年 ドイツ/韓国 102分 R-15
pic 2005年4月9日から4月15日まで上映 ■監督・脚本・編集・出演 キム・ギドク(『悪い男』
■撮影 ペク・ドンヒョン
■音楽 パク・ジウン

■出演 オ・ヨンス/キム・ジョンホ/キム・ヨンミ/ソ・ジェギョン/ハ・ヨジン/キム・ジョンヨン/チ・デハン

(C)Korea Pictures,LJ film,Pandora film 2003

あと何度、桜を見られるだろうか?あと何度、旬の秋刀魚を食べられるだろうか?そんなことをふと思うと、生きることはとても尊く、悲しさと喜びにみちていることに気が付く。私達はまぎれもなく時の流れの中に生きていて、その抗えない力の中で出会いと別れを繰り返し、自らを変化させながら生きていく。キム・ギドクは従来の攻撃性を極力拝した静謐な映像で、一人の男の人生を通してその事をスクリーンに映し出した。

pic○春…業:純粋さゆえの小さないたずらから殺生の「業」を背負ってしまう幼子。

万物が息づく春。深い山あいの湖に浮かぶ寺院。小さな蛙と蛇、そして魚に小石を結びつけるいたずらにふけりながら、天真爛漫 な笑い声をあげる好奇心旺盛な幼子が、翌朝目覚めると…。

○夏…欲望:少年が初恋に目覚め、執着を知る。

pic幼子は成長し17歳に。養生のために山寺へやってきた同い年の少女に初めての恋をする。少年僧の胸に少女への熱い想いが湧き上がり、執着が生まれる。

○秋…憤怒:殺意を抱く男が再び寺へ。

寺を出た青年が十数年ぶりに帰って来る。自分を裏切った妻を殺した殺人犯として。怒りと苦しみに堪えきれず、仏像の前で死のうとする青年を老僧は受け入れ戒める。

○冬…「虚無」:壮年期。こころの安らぎをもとめて。

刑期を終え、すっかり廃墟となった庵を再訪する男。 氷に仏像を彫り山寺の中で心身を鍛錬しつつ心を空っぽにして安らぎを得ようと過ごす日々。そんな中、赤子を背負った女が寺を訪れる。

pic韓国映画界の至宝として、世界にも名をはせるキム・ギドク9本目の映画。この作品は「私は今まであまりに激情的に生きてきたのではないだろうか」というキム・ギドクの<反省>から始まった。「キム・ギドクからも映画からも逃げ出したい」「観客にも休んでほしい」「自分も観客もしんどくならないように」といった一連の監督の発言は従来のアクの強い作品からの脱却ととれると同時に、キム・ギドクならではの「痛み」の新たな表現とも捉えることができる。

『春夏秋冬そして春』。間違いなく「人として生きて行くということ」の意味を問いかける傑作だ。

(sicky)



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