ロスト・イン・トランスレーション
LOST IN TRANSLATION
(2003年 アメリカ 102分)
2004年11月13日から11月19日まで上映 ■監督・製作・脚本 ソフィア・コッポラ
■撮影 ランス・アコード
■出演 ビル・マーレイ/スカーレット・ヨハンソン/ジョバンニ・リビシ/アンナ・ファリス/竹下明子/マシュー南(藤井隆)/田所豊(DIAMOND☆YUKAI)/林文浩/HIROMIX/藤原ヒロシ

■2003年アカデミー賞脚本賞受賞、作品・監督・主演男優賞ノミネートほか

(C)東北新社

「眠れないの」「僕もだ」

フォトグラファーの夫の仕事に同行してきた若妻シャーロットと、コマーシャル撮影の為来日したハリウッドスターのボブ。それまで見ず知らずの他人であった二人は、異国の地、東京ホテルパークハイアットのバーラウンジではじめて言葉を交わす。

お互いの孤独と不安が呼び寄せたその出会いは、やがて二人だけが共有する不思議な絆へと変わっていく。日中はスシ屋やシャブシャブ屋でランチを共にし、夜はホテルの部屋で枡酒を飲みながら古い映画を見て時を過ごす。二人が交す言葉の数は決して多くはない。けれど、今まで誰にも話せなかった心の奥底の不安や悩みを告白し合ううち、胸にしまい込んだわだかまりが溶けていくように感じられるのだった。そしてそんな孤独感を共有した2人に、やがて別れのときが近づいて…

初監督作『ヴァージン・スーサイズ』でその鋭敏な感性を世界中に披露したソフィア・コッポラ。監督第二作である本作で表現されたリリカルなメッセージは、早くも巨匠の域に達した。繊細にして大胆、なおかつ丁寧なフレームワークは「スナップショットを撮るような、インフォーマルな感覚」を目指して実現された。

picオール東京ロケ、スタッフの90%が日本人、画面には、わたし達日本人が見慣れた風景。それらのインフォメーションはたとえ「東京」がロンドンであってもN.Y.であっても同じ効果をもたらしたであろう。映画の視点はソフィア・コッポラのものであり、本作の主人公シャーロットやボブのものであるから。

しかし本作ではソフィアが「東京」にこだわった。だからこそ、スクリーンの向こう側、普段見慣れた風景はきっと、旅情的でメランコリックなものに感じる事ができるだろう。わたし達が普段気付かない、あるいは気付いているけれど通り過ぎてしまっているものを、この映画は映し出す。

本作はゴールデングローブ賞他数々の映画賞で作品賞を受賞し、主演男優(ボブ役ビル・マーレー)、主演女優(シャーロット役スカーレット・ヨハンソン)、オリジナル脚本(ソフィア監督による)、そして監督自身がそれぞれ、アカデミー賞各部門ノミネートをはじめ、多くの賞に輝いた。

(Ben)


このページのトップへ

真珠の耳飾りの少女
GIRL WITH A PEARL EARRING
(2002年 イギリス 100分)
pic 2004年11月13日から11月19日まで上映 ■監督 ピーター・ウェーバー
■原作 トレイシー・シュヴァリエ
■脚本 オリビア・ヘトリード

■出演 スカーレット・ヨハンソン/コリン・ファース/トム・ウィルキンソン/キリアン・マーフィー/エシー・デイヴィス

■2003年アカデミー賞撮影・美術・衣装デザインノミネートほか

(C)ギャガ・コミュニケーションズ

舞台は1665年、オランダのデルフト。天才画家ヨハネス・フェルメール(コリン・ファース)は、気位の高い妻と家計を取り仕切っている妻の母、6人の子供たちという大家族で暮らしていた。裕福な家でありながらも家計は常に逼迫した状態にあり、そのことをめぐる夫婦間の口論も絶えなかった。

picその頃、17歳のグリート(スカーレット・ヨハンソン)は、事故で失明したタイル職人の父に代わり家計を支える事に。フェルメールの家に雇われ、住み込みの使用人となる。

朝から晩まで重労働に追われる毎日。広大な敷地には、夫を非難する妻のヒステリックな声、走り回る子供たちの足音が昼夜を問わず響き渡っている。その喧騒を唯一免れている場所、それがフェルメールのアトリエだった。

picある日アトリエの掃除を命じられたグリートは、そこに置かれた完成間近い絵の美しさに強く惹かれる。フェルメールに見出されたグリートは、やがて弟子となりモデルとなり、画家に創造力を与えるようになる。

主人と使用人の距離を保ちつつも、次第にお互いが本能で理解しあえる運命の相手だと気付く二人…。グリートの内面に渦巻く秘められた感情を、無表情な物腰に滲ませたスカーレット・ヨハンソンの演技、絵画のような映像美にもにも注目だ。

(ロバ)



このページのトップへ