クレイマー、クレイマー
KRAMER VS. KRAMER
(1979年 アメリカ 105分)
2003年10月18日から10月24日まで上映 ■監督・脚本 ロバート・ベントン
■原作 アヴェリー・コーマン
■出演 ダスティン・ホフマン/メリル・ストリープ/ジャスティン・ヘンリー/ジョージ・コー/ジェーン・アレクサンダー

■1979年アカデミー賞作品・監督・脚色・主演男優・助演女優賞受賞ほか

(C)ソニーピクチャーズエンタテインメント

仕事と家庭を人生の両足と考えている男性にとってはこの作品、子供部屋の空に浮かぶ雲を描いた壁紙でまず涙腺をやられてしまう。仕事と家庭なら、まず仕事だと考えている男性は女性とは別の生き物であることを実感する。

picバツイチなんて言葉が流行りだして、離婚自体が社会的に「悪」という概念から解き放たれるきっかけになったのがこの作品からといっていいのではないだろうか。女性の自立を離婚という形から描く。一方で、D・ホフマンのフレンチトースト…残された夫のなんと不器用なこと。

いろいろな意味でアメリカで起きる様々な社会問題はタイミングがずれて日本でも起きる。『クレイマー、クレイマー』は予想に反せず日本における離婚問題を改めて考えさせられる作品となった。

pic自立だ何だといってもこの作品では、親子の絆はもちろんのこと夫婦の絆がなくなってしまったからこそ、M・ストリープは「誰かの娘や妻ではない自分自身を見つけたい」と言い残して去っていくわけで、テッドとビリーの父と子のやり取りのコミカルさがなければ大悲劇となっていたのではないか。

アカデミー賞でD・ホフマンは主演男優賞だが、M・ストリープは助演女優賞である。つまりこれは男性の目でみた離婚劇である。

pic女性の立場を丁寧に描き、これがまた夫の、人生の奥深さを感じさせてくれ、結局は誰も傷つかない選択技など、ありえないというメッセージが伝わってくる。

自分の家庭は大丈夫と思っている人には、今一度ご覧になっていただきたい秀作です。

(WING)


このページのトップへ

ムーンライト・マイル
MOONLIGHT MILE
(2002年 アメリカ 116分)
pic 2003年10月18日から10月24日まで上映 ■監督・脚本・製作 ブラット・シルバーリング
■出演 ダスティン・ホフマン/スーザン・サランドン/ジェイク・ギレンホール/ホリー・ハンター/エレン・ポンピオ

(C)ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ

もうお分かりと思うが、今回の『ムーンライト・マイル』の併映作品に『クレイマー、クレイマー』を選んだ訳はD・ホフマン演ずる夫像である。この二作でのテーマの共通点はあまりにも明確であり、そしてコミカルでもあることも、ホフマンの持ち味を十二分に生かされている。

picシルバーリング監督曰く、「人は極限状態に置かれると全く想像もつかない行動に走ってしまう。でもそのおかげでそれまで重苦しい状況だったのが一転して予想外に笑えるようになるんだ」

この作品は我々に身近な話として捉えられるシーンが随所にあり、もし自分だったらどのような態度でいられるか、もしくは態度をとるか…というところが観客にとって、フィクションと現実の葛藤が面白いのではないだろうか。

picしかも、タイトルですぐピンと来る方ならおわかりのようにこれはストーンズの往年の名曲のタイトルである。1970年代に青春を過ごした方々が、今ちょうどこの作品のD・ホフマンとS・サランドンの夫婦の年代と重なるのである。

他にも70年代の数々の名曲がちりばめられており、最近の『アイ・アム・サム』など、70年代、80年代の音楽をまるでキャストのごとく効果的に使うというのはひとつのブームかもしれない。

「この映画は感情的に成長しきれない親の物語でもあるんだ」とホフマンは語る。「子供が成長しても、親がその変化についていけないんだ。幼い子供への対処は出来ても、大人になった娘にどう接していいのか分からないんだ」と…

pic団塊の世代以下の方々へのメッセージのようでもあるようだ。若い世代の方々へのメッセージとして、シルバーリングは語る。「若い男性がこんな突然の不運に見舞われている中、予想外に別の女性、しかも本当の運命の人に出会ってしまうということを考えてみて欲しい」

本作品では、三大アカデミー賞スターと、ハリウッドの次代を担うジェイク・ギレンホールのリアルかつ繊細な名演が、物語をより味わい深い感動作に仕上げている。

(WING)



このページのトップへ