浮き雲
KAUAS PILVET KARKAAVAT
(1996年 フィンランド 96分)
2003年9月27日から10月3日まで上映 ■監督・脚本・製作 アキ・カウリスマキ
■撮影 ティモ・サルミネン/エリヤ・ダンメリ
■出演 カティ・オウティネン/カリ・バーナネン/エリナ・サロ/サカリ・クオスマネン

■1996年カンヌ国際映画祭パルムドールノミネート

(C)ユーロスペース

無口な運転手ラウリは市電の運転手。妻のイロナはかつての名門レストランの給仕長。ふたりは慎ましながらも幸せな生活を送っていた。しかしある日突然、夫婦揃って失職の憂き目に遭ってしまう。

腕はあるものの、中年にさしかかったふたりの職探しは厳しい現実に突き当たるばかり。ある日、かつての同僚もそれぞれ辛い日々を送っていると知ったイロナは、自分たちのレストランを再開させる決意をする。

『浮き雲』はそれまでのカウリスマキ映画の陰鬱な終わり方とは違って、最後にそっと希望をそえるようなささやかなハッピー・エンドの物語。

絶望的な状況が淡々と描かれていく中で、互いに愛し、信じあう家族の姿を、カウリスマキ作品特有のポーカーフェイスで無口な登場人物たちが乾いた笑いを誘い、シニカルにユーモラスに綴っている。

失業という現実に密着したテーマを描きながらも、どこか非現実的なムードを醸し出し、ヘルシンキの落ち着いた街並み、青を基調とした昼間でも夕闇のような色彩効果、簡素な室内調度品など余計なものをできる限り排除しようとする画面構成が印象的だ。


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過去のない男
MIES VAILLA MENNEISYYTTA
(2002年 フィンランド 97分)
pic 2003年9月27日から10月3日まで上映 ■監督・脚本・製作 アキ・カウリスマキ
■撮影 ティモ・サルミネン
■出演 マルック・ペルトラ/カティ・オウティネン/アンニッキ・タハティ/ユアニ・ニユミラ

■2002年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ・女優賞受賞、パルムドールノミネート/2002年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

(C)ユーロスペース

ヘルシンキに流れ着いたひとりの男。ベンチに佇んでるいると、そこに暴漢が表れ、男に瀕死の重傷を負わせ、持っていた所持品も奪い去ってしまう。

一命を取り留めた男はとある港町にたどり着く。しかし頭を打たれたせいで過去の記憶が一切なく、自分が何者かもわからない。とりあえずその辺の住民の口利きで空いているコンテナにすむことになった。

ある金曜日、救世軍によって振舞われるスープを飲みに行った男は、そこでイルマという女性と運命的な出会いをする。次第に親しくなっていく2人だったが、ひょんな出来事から男の過去が明らかになり…!

カウリスマキ監督の作品にはいつもとぼけた独特のユニークさを持った人たちが出てくるが、今作でもそんな人たちがたっぷり出てきて思わず笑ってしまう。出てくる人はほとんど、男が記憶喪失であることには心配も同情も寄せず「人生は前にしか進まないのだから」とひょうひょうと言ってのけるだ。

また日本通である監督自ら選曲したサントラにも注目。クレイジーケンバンドの『ハワイの夜』が流れるシーンはクスッと笑えるはず。

全編、監督特有の皮肉とペーソス、そしてそれらを上回るユーモアに溢れており、カウリスマキの最高傑作といっても過言ではない。

2002年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演女優賞ダブル受賞。主演女優賞を受賞したカティ・オウティネンはいわずと知れたカウリスマキ映画の顔である。『マッチ工場の少女』、『浮き雲』、『白い花びら』でも主演を務めている。



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