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『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』の主人公・デイヴィスの人生は、交通事故で妻を亡くしたことで一変します。彼は妻が死んでも全く動揺しない自分に、今まで人生を取り巻く様々なものに対して、何も関心がなかったことに気づくのです。そこで彼は“自分の感情”を探すべく、妻の父親からの「心の修理も車の修理と同じように、まずは分解しろ」という言葉に触発され、人生をやり直すために身の回りのものを分解し、壊し始めるのです。

この作品の原題はその破壊行動に基づいた“Demolition”=“解体、破壊”というタイトルです。しかし邦題は『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』になっています。「If it's rainy, You won't see me, If it's sunny You'll Think of me(今日が雨ならこのメモは見つからない。晴れていたら、これを見て私の事を想ってくれるよね)」という妻が書き残したメモが邦題のもとです。このメモが車のサンバイザーから落ちてきて、それを見つけた彼の表情に心を分解し、気持ちを整理できた事が見て取れて、目頭が熱くなりました。原題の意味から邦題のもとのシーンへの繋がりが、心の変化を捉えて、この物語の本質を現しているように感じられたのです。

『たかが世界の終わり』で描かれる家族は、主人公・ルイの気持ちなどお構いなしに、愛をむき出しにして接してきます。それは怒りや怖れのような、一見すると、愛からかけ離れた態度です。しかし、画面いっぱいに切り取られた激昂する彼らの表情や息遣いからは“彼を愛し、彼から愛されたい”という思いがあふれています。

グザヴィエ・ドラン監督の過去作『トム・アット・ザ・ファーム』で描かれていた田舎の不寛容さ、息苦しさに囚われる人々の姿は、田舎で育ち、近すぎる関係に悩み、都会の無関心にむしろ癒されている私にとっては胸にくるものがありました。今作では、それが更に密接に、生々しく描かれています。息が詰まる距離感、はずまない会話、言い出せない本音、家族だからと許される無神経な言葉や態度。どの国でも、どんな家庭でも、愛のすれ違いは起こりうるという物語に、なぜだか少し救われた気持ちになったのです。

今週の映画は、人への関心を描いた二作品です。無関心も人を傷つけ、また近すぎる関心も人の心を弱らせてしまいます。登場人物たちは不器用で、愛し方も愛され方も下手な人たちばかり。近くて大切な人ほど傷つけてしまう彼らの物語を観た時、現実の自分が向き合う大切な人たちのことを考えずにはいられませんでした。ジャン=マルク・ヴァレとグザヴィエ・ドラン。カナダのモントリオールという同じ場所で生まれた二つの才能の最新作を二本立てでどうぞお楽しみください。

(スタンド)

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
DEMOLITION
(2015年 アメリカ 101分 DCP PG12 シネスコ) pic 2017年7月8日から7月14日まで上映 ■監督・製作 ジャン=マルク・ヴァレ
■製作 ラッセル・スミス/モリー・スミス
■脚本 ブライアン・サイプ
■撮影 イヴ・ベランジェ
■編集 ジェイ・M・グレン
■音楽監修 スーザン・ジェイコブ

■出演 ジェイク・ギレンホール/ナオミ・ワッツ/クリス・クーパー/ジューダ・ルイス

©2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved.

妻が死んで気がついた。彼女のことは、よく知らない。
僕はあまりにも君に無関心だった――。

pic デイヴィスは、出世コースに乗り、富も地位も手に入れたウォールストリートのエリート銀行員。高層タワーの上層階で、空虚な数字と向き合う、味気ない日々。そんな会社へ向かういつもの朝、突然の交通事故で美しい妻を失った――。しかし一滴の涙も出ず、哀しみにさえ無感覚になっている自分に気づいたデイヴィス。

義父からのある言葉が引き金となり、デイヴィスは、身の回りのあらゆるものを破壊しはじめる。会社のトイレ、パソコン、妻のドレッサー、そして自らの結婚生活の象徴である「家」さえも――。あらゆるものを破壊していく中で、デイヴィスは妻が遺していた幾つもの“メモ”を見付けるのだが…

破壊を経て辿り着いた、人生で本当に大切なものとは――?
喪失と哀しみ、そして再生を描いた物語

pic本作は『ダラス・バイヤーズ・クラブ』『わたしに会うまでの1600キロ』のジャン=マルク・ヴァレ監督、待望の最新作。「僕は幸せを掴もうともがいている人に惹かれる。この映画は人生を再び始めるための、勇気いる旅路が美しかったんだ」と語り、何事にも無感覚になっている主人公の心の迷いに寄り添いながら、美しい映像でエモーショナルに描き切った。

そして、『ナイトクローラー』で狂気的な演技で人々を魅了させたジェイク・ギレンホールが、妻を亡くし、自分を見失った空虚な男の脆さを、繊細な演技で見事に表現。また、ジェイク演じるデイヴィスの心を溶かしていくシングルマザーをナオミ・ワッツ、デイヴィスの力になろうとする義父をクリス・クーパーが演じ、物語に華を添えている。

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たかが世界の終わり
Juste la fin du monde
(2016年 カナダ/フランス 99分 DCP PG12 ビスタ)
pic 2017年7月8日から7月14日まで上映 ■監督・製作・脚本・編集 グザヴィエ・ドラン
■原作 ジャン=リュック・ラガルス
■撮影 アンドレ・テュルパン
■音楽 ガブリエル・ヤレド
■美術 コロンブ・ラビ

■出演 ギャスパー・ウリエル/レア・セドゥ/マリオン・コティヤール/ヴァンサン・カッセル/ナタリー・バイ

■第69回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞/アカデミー賞外国語映画賞〈カナダ代表〉

©Shayne Laverdiere, Sons of Manual

愛が終わることに比べたら、たかが世界の終わりなんて

pic「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。母のマルティーヌは息子の好きな料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌは慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ、彼の妻のカトリーヌはルイとは初対面だ。オードブルにメインとぎこちない会話が続き、デザートには打ち明けようと決意するルイ。だが、兄の激しい言葉を合図に、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる――。

人は誰しも、愛し、愛されたいのです
分かり合うのは難しいけど、いつかきっと届くはずです
              ――グザヴィエ・ドラン

pic 19歳での監督デビュー作『マイ・マザー』で未来を変えるアーティストと騒がれ、その後も新作を発表するたびに、独自の映像世界で観る者を驚喜させている美しき天才、グザヴィエ・ドラン。2014年には『Mommy/マミー』でカンヌ国際映画祭審査員賞という栄冠を手に入れ、本作では第69回カンヌ映画祭グランプリを受賞している。

ドランが切り撮るのは、愛しているのに傷つけ合う【ある家族の1日】。うまく想いを伝えられないその姿は、まさにミスコミュニケーションに陥った現代の家族そのものだ。眩いほどの才能に引き寄せられて集まったのは、ギャスパー・ウリエル『SAINT LAURENT/サンローラン』、レア・セドゥ『アデル、ブルーは熱い色』、マリオン・コティヤール『エディット・ピアフ 愛の讃歌』、ヴァンサン・カッセル『美女と野獣』、ナタリー・バイ『わたしはロランス』。演技に人生を捧げた一流俳優たちが、12年ぶりに一堂に会した家族の時間を生きる。

彼らが全力でぶつけ合う感情──怒りも憎しみも悲しみも、そのすべてが愛だと気付く時、私たちは絶望の中にこそ希望があると知る。進化を遂げたドランがたどり着いた答え、それはあなたを導く愛の物語。

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