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フェデリコ・フェリーニ

監督■フェデリコ・フェリーニ

1920年1月20日、イタリア・リミニ生まれ。「映像の魔術師」の異名を持つ。

巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督の依頼で『無防備都市』の脚本に参加、以後はネオリアリスト系脚本家として高く評価される。50年にアルベルト・ラトゥアーダと共同で『寄席の脚光』を演出し、監督業に進出。

54年の『道』で世界的に名を知られ、『8 1/2』では64年度アカデミー外国賞を受賞し、巨匠としての座をゆるぎないものにした。43年にジュリエッタ・マシーナと結婚して生涯一緒だった。93年、心臓発作のため逝去。

フィルモグラフィ

・寄席の脚光('50)
・白い酋長('52)
青春群像('53)
・道('54)
・崖('55)
カビリアの夜('57)
・甘い生活('59)
・ボッカチオ'70('62)
8 1/2('63)
・魂のジュリエッタ('64)
・世にも怪奇な物語('67)
・サテリコン('69)
・フェリーニの道化師('70)
・フェリーニのローマ('72)
・フェリーニのアマルコルド('74)
・カサノバ('76)
・オーケストラ・リハーサル('78)
・女の都('80)
・そして船は行く('83)
・ジンジャーとフレッド('85)
・インテルビスタ('87)
・ボイス・オブ・ムーン('90)

*監督作品のみ

イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』の舞台となるのは、
オリンピック開催直前、映画スターやお金持ちたちがパーティに明け暮れ、
パパラッチがひしめく狂乱の街・ローマです。
主人公のマルチェロは、作家になるためにローマに来たのですが、
今はゴシップ専門の記者に甘んじています。

本作は一般的な起承転結あるドラマではなく、
エピソードが次から次に数珠繋ぎになっていく大胆な構成をとっていきます。
そのため、観客はマルチェロとともに
きらびやかなイメージの洪水に飲み込まれていくような感覚になります。

享楽的な生活の中でしだいに夢や理想を見失い、
虚無感の袋小路に陥っていくマルチェロ。
その姿は、消費社会に踊らされるわたしたち現代人の普遍的な姿のようでもあります。

乱痴気騒ぎに明け暮れたマルチェロたちと、
清々しい少女がシンボリックに対比されるラストシーンが鮮烈な余韻を残します。
このシーンに痛みや後ろめたさを感じるとしたら、私たちもマルチェロたちと同じく、
もはや清廉さから永遠に隔たれてしまった存在である証明なのかもしれません。

清らかで純粋な存在は『道』にも登場します。
ジュリエット・マシーナ演じるジェルソミーナです。

『道』は、粗暴で女癖の悪い大道芸人のザンパノと、
彼とめぐりあわせから旅をすることになる女性ジェルソミーナの物語です。
恋愛感情のないまま夫婦芸人として旅を続けるふたり。
ジェルソミーナは運命を受け入れ、彼を愛そうとしますが、
ザンパノは彼女の気持ちを真剣に考えようとはしません。

少年にも少女にも見えるジェルソミーナは、
人を疑わない天使のように描かれます。
『甘い生活』のマルチェロと違い、
ザンパノは彼女を通して最後には人間らしい愛情に目覚めますが、
そのきっかけは残酷極まりない運命のいたずらによるものです。

ロッセリーニ監督の『戦火のかなた』など、
現実を厳しく見つめるネオリアリズモ作品の脚本家でもあったフェリーニは、
戦争の傷跡が残る街並みや田舎の貧しい人々の表情を
ドキュメンタリーのように切り取りながら、人間が人らしく生き、
他者を愛することの難しさ、哀しさを情感豊かに謳いあげます。

今回上映する上記2作品は、
どちらも美しいイメージの欠片が観た人の心に突き刺さります。
人生を見つめなおすきっかけを与えてくれる、
かけがえのない映画体験をぜひスクリーンで!

(ルー)


甘い生活
LA DOLCE VITA
(1960年 イタリア/フランス 175分 35mm シネスコ/MONO) pic 2015年3月7日から3月13日まで上映 ■監督・原案・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■脚本 トゥリオ・ピネッリ/エンニオ・フライアーノ/ブルネッロ・ロンディ
■撮影 オテッロ・マルテッリ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/イヴォンヌ・フルノー/マガリ・ノエル/アラン・キュニー/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ/ニコ

■カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞/アカデミー賞衣装デザイン賞受賞・ほか3部門ノミネート/NY批評家協会賞外国映画賞受賞/英国アカデミー賞作品賞ノミネート

カンヌ映画祭グランプリ受賞作!
荒涼とした大都会ローマを舞台に
放浪する魂と上流社会のデカダンスを描く名作中の名作!

pic作家の夢を捨て、ゴシップ記者のトップとなったマルチェロ。彼はナイトクラブで出会った大富豪の娘とホテルで一夜を過ごし、取材で出会ったハリウッド女優と享楽的な遊びにふける。そんななかマルチェロは、同棲相手とともに友人宅を訪れる。友人一家の知的な生活を羨むが、その友人は子どもをつれて無理心中してしまう。絶望感に苛まれたマルチェロはまた狂乱に明け暮れることに…。

『甘い生活』はフェリーニがエピソードの綴れ織りといったスタイルを確立した大作。キリスト像を吊り下げたヘリコプターから、海岸に打ち上げられた怪魚に至るまで、イタリアの上流階級の甘い生活を追いながら、絢爛たるイメージを散らばせる。トレヴィの泉での戯れは、映画史に残る名シーンとなった。

pic出演は、フェリーニの分身でありイタリアを代表する大スター、マルチェロ・マストロヤンニ。フェリーニお気に入りのグラマー女優アニタ・エクバーグ。そのほか、『8 1/2』『男と女』のアヌーク・エーメ、『女ともだち』のイヴォンヌ・フュルノー、『サテリコン』のマガリ・ノエル、『恋人たち』のアラン・キュニーなど、キャストの豪華さもこの映画の魅力の一つである。

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LA STRADA
(1954年 イタリア 108分 35mm SD/MONO) pic 2015年3月7日から3月13日まで上映 ■監督・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■製作 カルロ・ポンティ/ディノ・デ・ラウレンティス
■脚本 エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ
■撮影 オテッロ・マルテッリ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 アンソニー・クイン/ジュリエッタ・マシーナ/リチャード・ベースハート/アルド・シルヴァーニ/マルセーラ・ロヴェーレ

■アカデミー賞外国語映画賞受賞・脚本賞ノミネート/ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞受賞/NY批評家協会賞外国映画賞受賞/ブルーリボン賞外国作品賞受賞/英国アカデミー賞作品賞・女優賞ノミネート

胸をしめつける<愛すること>の哀しさ――
イタリア映画史上、永遠に輝く名作!

pic怪力を売りに、オートバイで旅回りを続ける大道芸人ザンパノ。ある日彼は、白痴の娘ジェルソミーナを金で買い、助手とすることに。ザンパノはジェルソミーナを手ひどく扱うが、彼女はまったく逆らわない。そんなある日、ザンパノはかつて同じ曲芸団にいた男“キ印”と偶然再会する。ジェルソミーナは“キ印”と心を通わせていたが、うまの合わなかったザンパノは彼を殺してしまう…。

戦後、ロベルト・ロッセリーニ監督の『無防備都市』『戦火のかなた』等のシナリオで名を馳せたフェデリコ・フェリーニが監督として歩みだした頃の代表作。1954年にベネチア映画祭サン・マルコ銀獅子賞の受賞を皮切りに世界で上映され大絶賛を受け、56年のアカデミー最優秀外国映画賞など、数多くの賞に輝いた。

粗野な曲芸師ザンパノに扮するのは性格俳優として名を挙げたアンソニー・クイン。心の優しく少し頭の弱い女ジェルソミーナをフェリーニ監督夫人のジュリエッタ・マシーナが演じ、二人の絶妙なコンビネーションがこの作品を最高のドラマに仕立て上げている。『太陽がいっぱい』『8 1/2』のニーノ・ロータによる「ジェルソミーナ」は映画史上に残る名曲である。

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