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諏訪敦彦

1960年広島県生まれ。大学卒業後、長崎俊一、山本政志、石井聰亙(岳龍)などの作品に参加する一方で、『はなされるGANG』(84年/8ミリ)などの作品を発表。97年『2/デュオ』で長編映画監督デビュー。ロッテルダム映画祭でNETPAC賞を受賞。

2作目『M/OTHER』はカンヌ映画祭国際批評家連盟賞を受賞。アラン・レネの傑作『二十四時間の情事』を大胆にリメイクした3作目『H Story』など、日仏の名だたる俳優とコラボレーションしながら「新しい映画」を模索。ヨーロッパを中心に現代映画の担い手として世界的な評価を得る。日仏合作映画『不完全なふたり』は、ロカルノ映画祭で審査員特別賞を受賞、フランスでもロングランを記録した。

オムニバス映画『パリ・ジュテーム』では唯一の日本人監督として参加し主演にジュリエット・ビノシュを起用。その際に出演していた、イポリット・ジラルドと共同監督で『ユキとニナ』を製作した。

08年から13年まで、東京造形大学の学長職を務め、現在は東京藝術大学大学院教授を務めている。また、小中学生の子どもたちへ映画制作を教えるワークショップ「こども映画教室」の講師としても参加している。

filmography

・2/デュオ(97)
・M/OTHER(99)
・H Story(01)
・a letter from hiroshima(オムニバス『After War』の一篇)(02)
・不完全なふたり(05)
・ヴィクトワール広場(オムニバス『パリ、ジュテーム』の一篇)(06)
・ユキとニナ(09)
・ライオンは今夜死ぬ(17)

10年ほど前、VHSで『2/デュオ』を観た時の衝撃は忘れられません。主人公カップルたちのリアルなたたずまいはまるで実在するカップルの現在進行形のドラマを盗み見ているようで、その関係が壊れていく様の生々しさに胸をかき乱されながらも今まで味わったことのない不思議な感動を覚えたのです。

物語を超えたリアリティを生み出すために俳優たちとディスカッションを重ね、即興的な演出や演技を重視する諏訪監督作品は、「映画」や「人間」の可能性を巡る研ぎ澄まされた思考と実践のたまものです。

フィルムをシナリオの絵解きから解き放ち、登場人物たち(≒俳優たち)のリアルな呼吸や身体性を定着させること。それは一作ごとに先の見えない冒険に出るような困難な映画づくりを続けることであり、いきおい寡作にならざるを得ないのだと思いますが、その結果生まれた映画はどれも厳しさの中に温かみがあり、人生への洞察に富んだ珠玉の作品ばかりです。

今回はデビュー作からジャン=ピエール・レオーとの幸福なコラボレーションが実現した最新作『ライオンは今夜死ぬ』までがまとめて観られる貴重な機会。本特集を通して果敢な冒険を続けるこの世界的シネアストの作品がより多くの人に届いてもらえたらと思います。

(ルー)

ユキとニナ
Yuki et Nina
pic (2009年 フランス/日本 93分 35mm ビスタ/SRD)
6/9(土)・12(火)・15(金) 上映
■監督・脚本 諏訪敦彦/イポリット・ジラルド
■撮影 ジョゼ・デエー
■編集 諏訪久子/ローランス・ブリオ
■音楽 フォーレン・オフィス
■主題歌 ううあ「てぃんさぐぬ花」

■出演 ノエ・サンピ/アリエル・ムーテル/ツユ/イポリット・ジラルド/マリリン・カント/ジャン=ポール・ジラルド

■2009年カンヌ国際映画祭<監督週間>正式出品

©Yoshi OMORI

子供のままではいられない
光あふれる森の中、
耳を澄ませば心の声が聞こえてくる――

pic ユキはフランス人の父と日本人の母を持ちパリで暮らす9歳の女の子。ある日、母が父と別れてユキと日本で暮らしたいと考えていることを知り、ショックを受ける。ユキは親友のニナと一緒に、両親の離婚を止めようと、愛し合っていた頃を思い出してもらえるよう“愛の妖精”からと装って手紙を送るなど奔走するがうまくいかない。ついに最後の手段として家出をした2人は、やがて森へと迷い込んでしまう――。

pic諏訪敦彦監督とフランス人俳優イポリット・ジラルド。オムニバス映画『パリ、ジュテーム』で諏訪監督の一篇にイポリットが主演した際に意気投合し、本作の企画が始まった。お互い父親であるという共通点から着想を得て、子供の視点を理解することについて話し合い、主演のノエ・サンピと撮影前から手紙を交わし一緒に物語を作り上げていったという。

ノエは全ての台詞が即興という、ベテラン俳優でさえ戸惑う撮影方法にも気負わず、役柄を体現。彼女の自然なしぐさや言葉によって、大人の作りあげる言葉では表現できなかった子供の想いが生き生きと画面に溢れだす作品が完成した。

ライオンは今夜死ぬ★ラスト1本対象作品
Le lion est mort ce soir
pic (2017年 フランス/日本 103分 DCP ビスタ)
6/9(土)・12(火)・15(金) 上映
■監督・脚本 諏訪敦彦
■プロデューサー ジェローム・ドプフェール/吉武美知子
■撮影 トム・アラリ
■編集 マルシアル・サロモン
■音楽 オリヴィエ・マルグリ

■出演 ジャン=ピエール・レオー/ポーリーヌ・エチエンヌ/イザベル・ヴェンガルテン/アルチュール・アラリ/モード・ワイラー/ルイ=ド・ドゥ・ランクザン

©2017−FILM-IN-EVOLUTION−LES PRODUCTIONS BAL THAZAR−BITTERS END

さあ、映画を作ろう。
それこそが人生だから。

pic南仏コート・ダジュール。死を演じられないと悩む、年老いた俳優ジャン。過去に囚われ、かつて愛した女性ジュリエットの住んでいた古い屋敷を訪ねると、幽霊の姿となってジュリエットが彼の前に現れる。そして屋敷に忍び込んだ子どもたちからの誘いによって、突然はじまった映画撮影。やがて撮り進めるうちに、ジャンは過去の記憶と向き合い、忘れかけていた感情を呼び起こしていく。

pic 国内のみならず、フランスをはじめヨーロッパで圧倒的な評価を受けている諏訪敦彦監督が『ユキとニナ』以来8年ぶりに撮り上げた仏日合作作品。名立たる巨匠の作品に出演してきた“ヌーヴェルヴァーグの申し子”ジャン=ピエール・レオーが、自身の映し鏡のような老俳優を演じ、最後の代表作と呼ぶにふさわしい存在感を見せつけた。

さらに、南仏で開いたワークショップに集まった演技経験のない子どもたちを起用し、名優と天真爛漫な子どもたちの共演が実現。監督の持ち味である即興演出と、戯曲からの台詞の引用が交差し、奇跡的で詩情溢れる世界を創り上げている。

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M/OTHER
pic (1999年 日本 147分 35mm ビスタ/MONO)
6/10(日)・13(水) 上映
■監督 諏訪敦彦
■プロデューサー 仙頭武則
■ストーリー 諏訪敦彦/三浦友和/渡辺真起子
■撮影 猪本雅三
■編集 掛須秀一
■音楽 鈴木治行

■出演 三浦友和/渡辺真起子/高橋隆大/梶原阿貴/石井育代/北見敏之

■1999年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞

©WOWOW・バンダイビジュアル

「あなた私のことなんて知らないじゃない」

pic 離婚歴のあるレストラン経営者の哲郎は、29歳のデザイナー、アキと同棲している。ふたりは愛し合っているとはいえ、あまり互いに干渉しない関係を続けていた。だがある日、哲郎が過去に別れた妻が交通事故で入院し、彼は1人息子の俊介を預かることになる。アキは仕方なく承諾し、3人の生活が始まるが、次第にストレスを感じ始めたアキは、哲郎との間にも溝が生まれてしまう…。

pic諏訪敦彦監督第2作。疑似家族の関係の中で生じる男女の葛藤を通して、誰にでも起こりうるアイデンティティの崩壊や、生活の中で自由が失われることへのストレスを克明に描き、現代の男と女の関係における真の自由と愛との関係をまっすぐに見つめた人間ドラマ。哲郎を三浦友和が、アキを渡辺真紀子が演じる。“構成台本はあるが、シナリオはない”という独特のスタイルで、幸福な緊張感が漲る本作は、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど国内外で絶賛された。

H story★ラスト1本対象作品
pic (2001年 日本 111分 35mm ビスタ/SR)
6/10(日)・13(水) 上映
■監督 諏訪敦彦
■プロデューサー 仙頭武則
■撮影 キャロリーヌ・シャンプティエ
■編集 諏訪敦彦/大重裕二
■音楽 鈴木治行

■出演 ベアトリス・ダル/町田康/馬野裕朗

HIROSHIMA――
そこはいつしか新たな愛の生まれた場所になった。
誰も気づかないうちに
ベアトリス、彼女さえ・・・

ひとりの監督が自身の故郷広島で『二十四時間の情事』のリメイクを撮影している。撮影は順調にスタートしたかのように見えたが、主演女優のベアトリス・ダルは、40年前にマルグリット・デュラスが書いた「ヒロシマ モナムール」を台本通り演技しなければならないことに、次第に違和感を覚えはじめる。そして彼女はついに演じることができなくなる。相手役の男は何も言わず、ただ女を見つめる。そして、不穏な空気が流れる撮影現場に訪問者・町田康が現れた――。

『2/デュオ』や『M/OTHER』で脚本なし・即興演技での創作という新しい形の映画を浸透させた諏訪敦彦監督が、『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のベアトリス・ダルを主演に迎えた異色作。共演に小説家やミュージシャンとして活躍する町田康、撮影にゴダールやリヴェット、カラックス作品などに参加してきたキャロリーヌ・シャンプティエが参加している。

これはフィクションなのか、ドキュメンタリーなのか。<見つめること>と<見つめられること>を描いた111分。

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不完全なふたり
Un couple parfait
pic (2005年 フランス/日本 108分 35mm ビスタ/SR)
6/11(月)・14(木) 上映
■監督/構成 諏訪敦彦
■プロデューサー 澤田正道/吉武美知子
■撮影/アーティスティック・ディレクション キャロリーヌ・シャンプティエ
■編集 ドミニク・オーヴレイ/諏訪久子
■音楽 鈴木治行

■出演 ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ブリュノ・トデスキーニ/ナタリー・ブトゥフ/ルイ=ドー・デ・ランクサン

■第58回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞・国際芸術映画評論連盟賞受賞

別れを決めるとき、
人は初めて愛することを知る

pic 結婚15年になるマリーとニコラは、友人の結婚式に出席するためパリへやって来た。友人達からは“理想のカップル”として見られるふたりだったが、実は彼らは離婚することを決めているのだった。

パリ滞在の数日間にも、たびたび口論を繰り返すふたり。いっぽうマリーはロダン美術館で、あたかも溶け合おうとする女と男を描いた彫像を見て引きつけられる。「私たち何をしたの?」「何をしなかったの?」失ってしまうことに気づいた時、初めて相手の存在をより大きく感じ始めるのだった――

picオール・パリロケ、全編フランス語ダイアローグによる作品。完成された脚本を使わず、キャスト・スタッフとのディスカッションから映像を紡ぎ出す手法で、女と男の心の揺れ動きを見事に描き出した。マリーを演じるのは多くのフランス、イタリア映画に出演するヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。またキャロリーヌ・シャンプティエが撮影を担当したほか、ヨーロッパの名匠の作品を支えてきたスタッフが結集している。

ロカルノ国際映画祭では準グランプリにあたる審査員特別賞と国際芸術映画評論連盟賞をダブル受賞、フランスでは3万人以上を動員するヒットを記録した。

2/デュオ★ラスト1本対象作品
pic (1997年 日本 90分 35mm ビスタ/MONO)
6/11(月)・14(木) 上映
■監督・構成 諏訪敦彦
■プロデューサー 仙頭武則/小林広司
■撮影 田村正毅
■編集 大重裕二
■音楽 アンディ・ウルフ

■出演 柳愛里/西島秀俊/渡辺真起子/中村久美

近すぎて、傷つけてばかりいる。

pic俳優に強く憧れる恋人、圭の心が揺れた時、まるで共鳴するかのように優の心も形を失っていく。俳優を職業とする事のへの挫折感から、「結婚」を口にし、意味のない失踪を繰り返す圭。これまで彼を支え続けてきた優は、そんな圭の焦燥と向かい合う内に、次第に自分自身の姿さえも見失いかけているのに気がついた。そして、ある日、優は圭の前から姿を消す…。

二人でいるがゆえの孤独や焦躁。誰もがその心の奥底で感じたことのあるような感情のぶれをたぐい稀な緊張感と繊細さで描き出す傑作。『はなされるGANG』で注目された諏訪敦彦監督が、8度にも渡る推敲を重ねた脚本を捨て、セリフや動きを全て現場で役者の即興芝居に任せた斬新な手法で完成させた、初の劇場用作品。『ニンゲン合格』の西島秀俊と『東京日和』の柳愛里が主演し、ひと組の恋人の微妙な心模様を体現する。

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