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『三度目の殺人』の役所広司をみていると、
自分が人間のことを何も知らないのだと思い知らされる。
人が人を殺す動機。殺意。
犯人が殺人を行うのに十分な感情がそこにあるとみなされるとき、
そこには人間が殺人を犯す感情の理由が簡単に出揃ってしまう。
「お金のため」「復讐のため」「ただカっとして」
しかし、この映画の役所広司は人を殺す理由を見せない。
おそらく殺しただろうと感じてしまうのだ。

一方で『彼女がその名を知らない鳥たち』の蒼井優は、
その身体すべてを投げ出して、
観客の体験や過去に感じたことのある感覚を引き寄せる。
不潔で、下品でデリカシーのない一緒に暮らす男を相手に、
わがまま放題ふるまう、この甘えた気持ちと倦怠感。
何か理由のない不幸から逃げ出したそうなその横顔に、
私たちは多くの感情を預けることができる。

一体なぜ彼らはここまで様変わりして、
物語の謎を一身に受け止める器になるのだろうか。
この二本の映画では、
「なにかのため」の理由や、意味に簡単に回収されない人間の姿、
強く秘められた複雑な感情が語られています。
ぜひご堪能ください。

(ぽっけ)

三度目の殺人
(2017年 日本 124分 DCP シネスコ) pic 2018年4月21日から4月27日まで上映 ■監督・脚本・編集 是枝裕和
■撮影 瀧本幹也
■美術 種田陽平
■音楽 ルドヴィコ・エイナウディ

■出演 福山雅治/役所広司/広瀬すず/満島真之介/斉藤由貴/吉田鋼太郎/市川実日子/松岡依都美/橋爪功

■第41回日本アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞・助演女優賞・編集賞受賞/第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品

©2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

犯人は捕まった。真実は逃げつづけた。

pic それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し死刑はほぼ確実。しかし、弁護を担当することになった重盛は、なんとか無期懲役に持ちこむため調査を始める。

調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述が、会うたびに変わるのだ。金目当ての私欲な殺人のはずが、週刊誌の取材では被害者の妻・美津江に頼まれたと答え、動機さえも二転三転していく。さらには、被害者の娘・咲江と三隅の接点が浮かび上がり――。

日本アカデミー賞6冠達成!
福山雅治×役所広司×広瀬すず
是枝裕和監督が深い闇の先にある<真実>に挑む――

picカンヌ国際映画祭・審査員賞受賞から全世界へと広がった『そして父になる』の熱狂から4年。是枝裕和監督×福山雅治主演というタッグに加え、名優・役所広司が是枝組に初参加。さらに、『海街diary』に続き是枝組2度目の出演となる広瀬すずを迎え、日本を代表する豪華キャストの競演が実現した。

是枝監督が近年描き続けてきたホームドラマという主題から離れ、初となるサスペンス、法廷劇に挑戦した本作。弁護士が覗いた容疑者の深い闇――その先に待ち受ける慟哭の真実とは? そして最後に明かされる“三度目の殺人”とは――? 本年度日本アカデミー賞で作品賞や監督賞をはじめ主要6部門に輝いたこころ震える心理サスペンスが幕を開ける。

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彼女がその名を知らない鳥たち
(2017年 日本 123分 DCP R15+ シネスコ)
pic 2018年4月21日から4月27日まで上映 ■監督 白石和彌
■原作 沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」(幻冬舎文庫)
■脚本 浅野妙子
■撮影 灰原隆裕
■編集 加藤ひとみ
■音楽 大間々昂

■出演 蒼井優/阿部サダヲ/松坂桃李/竹野内豊/村川絵梨/赤堀雅秋/赤澤ムック/中嶋しゅう

■第41回日本アカデミー賞主演女優賞受賞/キネマ旬報ベストテン2017主演女優賞受賞/第42回トロント国際映画祭正式出品

©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

あなたはこれを 愛と呼べるか

pic15歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。

ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。

共感度ゼロの最低な女と男が辿りつく
究極の愛とは――
鬼才・白石和彌がベストセラー・ミステリーを映画化

pic 人間が本質的に持つ闇や愚かさに迫りながらも光を感じさせる読後感で、多くのファンを生んでいる沼田まほかるのベストセラー小説「彼女がその名を知らない鳥たち」。映画化したのは、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など実録路線のクライムムービーで高い評価を得た白石和彌監督だ。ノンフィクションを原作に骨太な社会派エンターテイメントを生んできた監督が、初めて本格的な大人のラブストーリーに挑んだ。

地位もお金もない陣治をひどく足蹴にしながらも、恋愛に依存せずには生きられない儚い危なっかしさを感じさせる十和子を演じるのは蒼井優。本作で見事日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。彼女と関わる3人の男たちを、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊が演じる。それぞれの役者がこれまでに見せたことがないまったく新しい表情を見せ、愛の概念を変えるような物語に命を吹き込んでいる。

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