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実際の事件や歴史的人物を扱う映画は、史実をわかりやすく伝えてくれるだけでなく、一人の生身としての人間像をえぐり描くことによって、報じられてきた“事実”とは違う視点を観客に与えてくれます。今週の上映作品は、歴史を作り、社会を動かしたある人物たちの伝記映画です。一人は、在任期間3年足らずで凶弾に命を奪われた、JFKこと第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディのファーストレディ、ジャクリーン・ケネディ。そしてもう一人は、2013年に世界を驚愕させた内部告発事件の中心人物、元CIA職員エドワード・スノーデンです。

称賛と同情、非難が入り混じり、ゆえにドラマとして語られる価値があるこの二人。国家機密を暴露したことで、祖国からは犯罪者として追われるスノーデンですが、一方では義憤にかられた純粋な告発者という評価も受けています。国のリーダーとしてさほど実績を上げられなかったJFKよりも、ジャクリーンはホワイトハウス史上最も有名で、悲壮で、そして野心に満ちたファーストレディとして、人々の記憶にとどまることになりました。

そんな人物を、二人の主演俳優が“憑依”という言葉がふさわしい演技で魅せてくれます。 人形のように整った顔立ちに、貼りついたような痛々しい笑みを浮かべるジャッキー。嗚咽をもらしながら、夫の血しぶきをぬぐうジャッキー。そんなあらゆるシーンで、ナタリー・ポートマンの気迫に唸らされます。スノーデンを演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットも、アメリカの正義と自身の正しさの間で苦悩する繊細さと、告発者としての大胆不敵さを見事に演じ分けました。

ジャッキーは運命に翻弄された哀れなヒロインなのか。計算高い悪女なのか。スノーデンは国家の裏切り者なのか、汚れなき愛国青年なのか。歴史の主役たちのもうひとつの真実を、ぜひ劇場でご覧ください。

(ミ・ナミ)

スノーデン
SNOWDEN
(2016年 アメリカ/ドイツ/フランス 135分 DCP PG12 シネスコ) pic 2017年8月12日から8月18日まで上映 ■監督・脚本 オリバー・ストーン
■脚本 キーラン・フィッツジェラルド
■原作 ルーク・ハーディング「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(日経BP社刊)/アナトリー・クチェレナ「Time of the Octopus」
■撮影 アンソニー・ドッド・マントル
■音楽 クレイグ・アームストロング

■出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット/シャイリーン・ウッドリー/メリッサ・レオ/ザカリー・クイント/トム・ウィルキンソン/スコット・イーストウッド/リス・エヴァンス/ニコラス・ケイジ

©2016 SACHA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

世界を信じた、純粋な裏切り者。

pic 2004年、9.11後の対テロ戦争を進める祖国アメリカに貢献したいと考えて軍に志願入隊したスノーデンは、足に大怪我を負って除隊を余儀なくされる。失意のさなかCIAに採用された彼は、持ち前のずば抜けたコンピュータの知識を教官に認められ、2007年にスイス・ジュネーヴへ派遣された。しかしそこで目の当たりにしたのは、アメリカ政府が対テロ謀報活動の名のもと、世界中のメール、チャット、SNSを監視し、膨大な情報を収集している実態だった――。

たったひとりの若者が世界中を震撼させた!
スノーデンとは英雄か、それとも国家の裏切り者か?
巨匠オリバー・ストーンが描く
史上最大の内部告発

pic『プラトーン』『7月4日に生まれて』で二度のアカデミー賞監督賞に輝き、『JFK』『ニクソン』『ブッシュ』の3本でアメリカ大統領を題材にするなど、ハリウッドきっての社会派監督オリバー・ストーン。本作では、ルーク・ハーディングのノンフィクション「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」を原作に、史上最大の内部告発者エドワード・スノーデンの知られざる人物像に迫る。

pic 主人公スノーデンを演じるのは、『(500)日のサマー』『インセプション』『ザ・ウォーク』などで日本でも多くのファンを獲得している若き実力派ジョセフ・ゴードン=レヴィット。本人と見まがうほど瓜ふたつの風貌、声色、仕種をマスターするとともに、ナイーヴなひとりの青年としての心の機微を見事に演じている。

米政府が構築した個人情報収集プログラムはテロリストだけでなく、民間企業や個人まで対象になっていた驚愕の事実。この恐ろしい現実に危機感を募らせたスノーデンは、たったひとりで国家権力に立ち向かう決意を固めていく。また長年にわたってスノーデンのパートナーとして寄り添うリンゼイ・ミルズとの絆も描かれ、観る者の胸を締めつける。

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ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命
JACKIE
(2016年 アメリカ/チリ/フランス 99分 DCP ビスタ)
pic 2017年8月12日から8月18日まで上映 ■監督 パブロ・ラライン
■製作 ダーレン・アロノフスキー/フアン・デ・ディオス・ラライン/ミッキー・リデル/スコット・フランクリン/アリ・ハンデル
■脚本 ノア・オッペンハイム
■撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ
■音楽 ミカ・レヴィ

■出演 ナタリー・ポートマン/ピーター・サースガード/グレタ・ガーウィグ/ビリー・クラダップ/ジョン・ハート/リチャード・E・グラント/キャスパー・フィリップソン

■第89回アカデミー賞主演女優賞・作曲賞・衣装デザイン賞ノミネート/第74回ゴールデン・グローブ賞女優賞ノミネート/第73回ヴェネチア国際映画祭脚本賞受賞

©2016 Jackie Productions Limited

24歳で未来の大統領と結婚、
31歳でホワイトハウスに入り、
34歳で未亡人となった
ジャッキーの<最後の使命>とは?

pic1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に銃撃される。目の前で愛する夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディは、怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になっていくのを目の当たりにしたジャッキーは、彼の名前と功績が後世に残るかどうかは、この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。

自らの手で築き上げてきた<ケネディ伝説>を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも顧みず、最後の使命に身を投じる──。

彼女がいたから、
ケネディ大統領は<永遠の伝説>になった――
世紀のファーストレディの知られざる物語

pic “史上最も有名なファーストレディ”“世界で最も愛されたファッションアイコン”として熱狂的な人気を獲得していた、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領夫人、ジャッキーことジャクリーン・ケネディ。なぜ彼女は、夫の突然の死で人生が一変したわずか3日後に、今も語り継がれる偉業を成し遂げることができたのか? 本作ではジャッキーがケネディと結婚してからの10年間を徹底的にリサーチし、知られざるジャッキーの真実に迫る。

picジャッキーを演じるのは、『ブラック・スワン』でオスカーに輝いたナタリー・ポートマン。ジャッキーの独特のハスキーヴォイスとアクセントを完璧にマスターし、高貴で繊細な魂をドラマティックに演じ切り、本年度の賞レースを席巻した。また、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督がプロデューサーとして参加し、『NO』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたチリ出身のパブロ・ララインが監督を務めている。

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