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フィラデルフィア美術館の正面玄関前に、両手を大きく上げたボクサーの銅像がある。その地元の伝説的存在であるロッキーの銅像を見つめながら、ボクシングへの情熱を燃やす男がいた。フィラデルフィアに引越し、質素な部屋に住む彼はかつて一流企業に勤めていた。昇進したてであった彼の家は広く、部屋には動画を映し出すスクリーンがあった。そこに映し出されているのはボクシングのタイトルマッチ。彼はまるで自分が試合をしているかのように、プロジェクターの光を浴びながら、スクリーンの前でシャドーボクシングを始めるのだった。

場所は大きく西に移り、カリフォルニア州コンプトン。ストリートギャングの抗争が絶えない危険な街で、警察は危険だと見なすものに容赦のない制裁を加えていた。路上で立ち話をしているだけで地べたに倒され、乱暴な扱いを受ける。鬱屈とした彼らを取り巻く環境や社会の状況。そんな街の生活を観察してはノートに言葉を連ね、重厚なリズムにのせ叫ぶ。過激ではあるがリアルを反映した音楽は次第に大きな反響を呼び始めるのだった。

重低音とともに登場する彼らを、今大勢の観客が見つめる。
『クリード チャンプを継ぐ男』のアドニスはリングの上で世界王者と対峙する。「フィラデルフィアは男を強くする」とロッキーのもとでトレーニングを積む彼に、予期せぬ形でチャンスが舞い降りる。
そして過激な発言ゆえにFBIに警戒されていたヒップホップグループ【N.W.A.】。熱狂するオーディエンスを前に、警察の勧告を無視し、コンプトンで培われたスタイルを躊躇なく押し通そうとする。

フィラデルフィアとコンプトンという異なる場所で、それぞれの街に根を置き大きなものに挑む。繰り返されるパンチの応酬はリズムを生み、吐き出される言葉は戦うかのように鋭く重い。どちらの作品も私たちの心と身体を揺さぶり、ほとばしる熱意をダイレクトに届けてくれる。そしてその熱意が自分の内側からもふつふつと沸いてくるのがよくわかる。「今すぐ何かをしなければならない!」と、スクリーンの向こうの彼らのことを真似するように、身体が動いてしまうのだ。

(ジャック)

クリード チャンプを継ぐ男
CREED
(2015年 アメリカ 133分 DCP シネスコ) pic 2016年6月4日から6月10日まで上映 ■監督・原案・脚本 ライアン・クーグラー
■製作 シルベスター・スタローン/ケビン・キング=テンプルトン/アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ/チャールズ・ウィンクラー/デイビッド・ウィンクラー/ウィリアム・チャートフ
■脚本 アーロン・コビントン
■撮影 マリース・アルベルティ
■美術 ハンナ・ビークラー
■編集 マイケル・ショーバー/クローディア・カステロ
■音楽 ルートヴィッヒ・ヨーランソン

■出演 マイケル・B・ジョーダン/シルベスター・スタローン/テッサ・トンプソン/フィリシア・ラシャド/アンソニー・ベリュー/グレアム・マクタビッシュ

■2015年アカデミー賞助演男優賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞助演男優賞受賞/全米批評家協会賞主演男優賞受賞

あのロッキーが再び立ち上がる
親友の息子をチャンプにするために――

pic愛する妻に先立たれ、孤独に暮らすロッキーの前に突然現れたアドニス。その純粋さとボクシングへの情熱に亡き親友アポロの面影を見たロッキーは、持てる全てを彼に託し、2人で頂点を目指すことを誓うのだった。

親の七光りとあざ笑われても、リングに叩きつけられても、アドニスは絶対に夢を諦めない。たぎる血の中には父親アポロが、後ろにロッキーがいる。どんな強敵を前にしても一歩も引かず、2人のチャンプに支えられ共に戦うのだ。しかし、世界王者とのタイトルマッチ直前、ロッキーの身体に異変が…。

『ロッキー』シリーズ歴代新記録!
不朽の名作の魂《ソウル》を
正統に継ぐ【新章】が幕を開ける――

pic幾多の強敵と戦い、リングに立ち続けてきたロッキー。あらゆる栄光を手にした彼が、ただひとつ得られなかったもの。それは自分の後を継ぐファイターだった…。『クリード チャンプを継ぐ男』は、ロッキーがかつて死闘を繰り広げたライバルにして親友・アポロの息子と出会い、真の師弟関係を築き上げるまでを描く感動の物語。第1作目の公開から約40年、『ロッキー』の伝説は、ここに正統なる後継者へと引き継がれる。

picロッキーを演じるのはもちろんシルベスター・スタローン。スタローンの本作での演技は、アカデミー賞ノミネートやゴールデン・グローブ賞受賞など高い評価を得た。アポロの息子アドニス役には、『クロニクル』『フルートベール駅で』の新鋭マイケル・B・ジョーダン。監督は同じく『フルートベール駅で』で注目を集めたライアン・クーグラー。映画大学在学中に本作の構想を描いていたという若手ながら、シリーズ屈指のリアルなファイトシーンと過去作へのオマージュあふれる演出で、生みの親スタローンをも魅了させた。ひたむきに前に進めば、いつか必ず夢は叶う。『ロッキー』のスピリットを真正面から受け継ぎ、いま新たな、そして最高の【新章】が幕を開ける!

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ストレイト・アウタ・コンプトン
Straight Outta Compton
(2015年 アメリカ 147分 DCP R15+ シネスコ)
pic 2016年6月4日から6月10日まで上映 ■監督・製作 F・ゲイリー・グレイ
■製作 ドクター・ドレー/アイス・キューブ/マット・アルバレス/トミカ・ウッズ=ライト/スコット・バーンスタイン
■脚本 ジョナサン・ハーマン/アンドレア・ベルロフ
■撮影 マシュー・リバティーク
■プロダクションデ ザイン シェイン・ヴァレンティノ
■編集 ビリー・フォックス
■音楽 ジョセフ・トラパニーズ

■出演 オシェイ・ジャクソン・Jr/コーリー・ホーキンス/ジェイソン・ミッチェル/オルディス・ホッジ/ニール・ブラウン・Jr/ポール・ジアマッティ

■2015年アカデミー賞脚本賞ノミネート

最も危険な時代が生み出した
最も危険なヤツら

pic1986年、アメリカ屈指の危険な街カリフォルニア州コンプトン。ロサンゼルス市警は過剰な取り締まりを行い、ギャングと見なすものには容赦なく制裁を加えていた。売人だったイージー・Eは、いち早くヒップホップカルチャーに未来を見出し、足を洗ってコンプトンのクラブを回り始める。彼のカリスマ性に魅かれ、DJイェラ、MCレン、アイス・キューブ、そしてドクター・ドレーが集う。警察からの偏見と圧力に対し、彼らができることはラップに全ての怒りをぶちまけること。やがて彼らの声は力を持ち始め、武器となり、群集を動かしていく――。

全米”社会現象化“大ヒット!
音楽伝記映画史上興収No,1を記録した
ヒップホップ・グループN.W.Aの知られざる物語

pic 1986年に結成されたヒップホップ・グループN.W.A。アメリカ屈指の危険地帯コンプトンで、彼らは暴力に走らず、ラップという表現で権力者たちに立ち向かった。本作は、グループ結成から、成功への道のりと挫折、名声の代償、権力と偏見の戦い、裏切り、そして友との別れ…その知られざる物語を克明に描き出す。全米で公開されると驚異の3週連続No.1を記録し、ついには音楽伝記映画史上歴代1位を樹立。映画レビューサイトRotten Tomatoesでも堂々90%の高評価を叩き出し、もはや社会現象となった話題作だ。

pic出演者は完全オーディションで選ばれ、メンバーの1人アイス・キューブを実の息子であるオシェイ・ジャクソン・Jrが熱演するほか、次世代の俳優たちが伝説のN.W.Aを体現する。彼らが実演した本物と見紛う圧巻のライブシーンは見逃せない。監督はメンバーと親交のあった『交渉人』のF・ゲイリー・グレイが務め、さらには製作に、ドクター・ドレーとアイス・キューブ本人が名を連ねる。今なお、様々なアーティストに圧倒的な影響を与え続けるN.W.A.の全てを見届けよ!

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