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今週は、欲にまみれたトゥーマッチな二本立て!
まず、この二本の映画の共通点を挙げたいと思います!

1、共感できる登場人物が一切いない!

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、“ウォール街のウルフ”ジョーダン・ベルフォートが主人公。若くして証券会社を設立し、明らかに違法なやり方でとにかく金を稼ぎまくる! そしてそのありあまるほどの金を使ってすることは、ドラッグ、セックス、アルコール、毎夜毎夜のどんちゃん騒ぎ! 彼を取り巻く会社仲間も全員ジャンキー。超美しい奥さんとの間にあるのは金とセックスだけの絆。その狂いっぷりは完全に常軌を逸したもので、逆に清々しくもあります。もちろんその先に待っているのは破滅だけなのですが…。

いっぽう『ブリングリング』の主人公は、アメリカの裕福な家に育ったティーンたち。ある日、セレブの家に侵入して泥棒することを計画します。理由は簡単、楽しいから。犯罪だって日常の行為と同じような感覚であっけらかんとやってみせるのです。まんまと盗みは成功、彼女たちは盗んだものをクラブで見せびらかし、SNSに写真をアップし、これまたどんちゃん騒ぎ。悪びれる様子は一切なく、終始かる〜い雰囲気です。だって、楽しいから。

2、でもね、これ…実話の映画化なんです!

おもわずあっけに取られてしまう彼らの言動。でも一番口あんぐりなのは、両方とも実際にあった話だということ。

『ウルフ〜』の監督はマーティン・スコセッシ。これまでギャングやマフィアの世界に生きる男たちを描いてきた巨匠が、伝説の証券マンのイカれた人生を嬉々とフィルムに焼き付けます。そして主演のレオナルド・ディカプリオも、キャリア史上最高のぶっ飛び名演技を披露! マジで、狂ってます。

『ブリングリング』を映画化したのはソフィア・コッポラ監督。少女の繊細な心情をテーマにしてきた彼女ですが、今回は同じ少女でも、向かう方向は全く違います。描くのは、享楽と見栄とお手軽な願望で毎日を過ごす現代のティーンたちの姿です。

3、彼らのその後の人生は…

そして、映画の主人公たちは、もちろん今も“実在”しています。それはただ生きている、というのではなく、映画の続きを生きている、という意味で。ジョーダン・ベルフォートは服役後、自己啓発セミナーの講演活動で世界中を元気に飛び回っています。しかも本作にちゃっかり出演までしちゃってます。ブリングリングの少女たちは、逮捕されメディアで注目されたことを待ってましたとばかりにテレビ出演。今もツイッターやフェイスブックで私生活を公開しています。もうすっかり“有名人”です。

スコセッシもコッポラも、彼らに対して批判的でも肯定的でもありません。あくまで自分の映画の主人公として、レンズを通し見つめています。でも、だからこそ登場人物が時折見せる、疲弊した顔や無邪気な顔は、監督のつくりものなんじゃないか…と感じてしまいます。実際の彼らは、本当に、何も考えていないんじゃないか、と。

誰にでも欲はあります。「○○が欲しい」「○○になりたい」…あげればきりがないでしょう。 今日の大量消費社会の中で、モラルはどんどん失われつつあります。浴びるほどの金が手に入ったら、憧れのセレブが手の届きそうなところにいたら、どうしますか? あなただって、映画の中の彼らのようにならないとは言い切れないかも…

ま、でも、ありえないか。実話とはいえ、かぎりなくフィクションに近いから、こんなにおもしろいんですよね。さぁ、今週は早稲田松竹で、インモラルな世界にどっぷり浸かれる、狂乱の4時間半をお過ごしください!

(パズー)


ブリングリング
THE BLING RING
(2013年 アメリカ/フランス/イギリス/日本/ドイツ 90分 DCP R15+ ビスタ) pic 2014年5月3日から5月9日まで上映 ■監督・製作・脚本 ソフィア・コッポラ
■製作 ロマン・コッポラ/ユーリー・ヘンリー
■原作 ナンシー・ジョー・セイルズ
■撮影 ハリス・サヴィデス/クリストファー・ブロヴェルト
■編集 サラ・フラック
■音楽監修 ブライアン・レイツェル

■出演 エマ・ワトソン/ケイティ・チャン/タイッサ・ファーミガ/イズラエル・ブルサード/クレア・ジュリアン/レスリー・マン

■第66回カンヌ国際映画祭ある視点部門オープニング作品

キラキラしてたい

picハリウッドスターや人気モデルが数多く暮らす、ロサンゼルス郊外の高級住宅地カラバサス。セレブリティの生活に憧れるニッキーたち5人の少年少女は、セレブの豪邸をインターネットで調べ、次々に侵入し、きらびやかなブランド服やジュエリーの数々を盗み出す。まるでショッピングでも楽しむかのように。しかし、ほんの悪ふざけのつもりだった無謀な冒険は、次第にエスカレートし、彼女たちを二度と後戻りできない場所へ追いやっていく――。

全米を騒然とさせたハリウッド窃盗団事件
時代の本質に迫るソフィア・コッポラ監督が映画化!

pic『ロスト・イン・トランスレーション』で第76回アカデミー賞脚本賞、前作『SOMEWHERE』で第67回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を獲得し、いまや名実ともに世界を代表する映画監督のひとりとなったソフィア・コッポラ。90年代にはファッション・アイコンとしてガーリー・カルチャーを牽引し、常にメディアの注目を浴びてきた彼女が、全米メディアを騒然とさせた衝撃の事件――ハリウッド・セレブの豪邸を襲ったティーン窃盗団――というセンセーショナルな題材を映画化した。

pic加熱するセレブカルチャーに囲まれて生きる現代のLAガールをリアリティたっぷりに演じるのは、「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンを初め、フレッシュな十代の俳優たちだ。ルイ・ヴィトン、シャネル、クリスチャン・ルブタンなど、ラグジュアリーな高級ブランドのおびただしいアイテムがスクリーンを飾り、カニエ・ウエスト、M.I.A.、フランク・オーシャンらの音楽が街に溶けるハイセンスなコラボレーションはソフィア・コッポラならでは。また実際の事件の被害者だったパリス・ヒルトンが撮影場所として自宅を提供したことも話題となった。

セレブ、犯罪、インターネット、リアリティ番組――今を生きるティーンを蝕む時代のキーワード。キラキラと眩しく、でも残酷ではかない少年少女たちの光と影を鮮烈に焼きつけた青春映画が完成した。

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ウルフ・オブ・ウォールストリート
THE WOLF OF WALL STREET
(2013年 アメリカ 179分 dcp R18+ シネスコ) pic 2014年5月3日から5月9日まで上映 ■監督・製作 マーティン・スコセッシ
■製作 レオナルド・ディカプリオ/リザ・アジズ/ジョーイ・マクファーランド/エマ・コスコフ
■原作 ジョーダン・ベルフォート「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(早川書房刊)
■脚本 テレンス・ウィンター
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■編集 セルマ・スクーンメイカー

■出演 レオナルド・ディカプリオ/ジョナ・ヒル/マーゴット・ロビー/マシュー・マコノヒー/ジョン・ファヴロー/カイル・チャンドラー/ロブ・ライナー/ジャン・デュジャルダン

■2013年アカデミー賞作品賞ほか5部門ノミネート/ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞(レオナルド・ディカプリオ)/ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞脚色賞受賞・トップ10作品選出・スポットライト賞受賞/英国アカデミー賞4部門ノミネート

貯金ゼロから年収49億円
ヤバすぎる人生へ、ようこそ。

pic22歳でウォール街の金融界へ飛び込んだジョーダン・ベルフォート。学歴もコネも経験もなかったが、誰も思いつかない斬新なアイディアと、一瞬にして人の心を掴む話術で瞬く間に成り上がっていく。26歳で証券会社を設立、年収4900万ドル(約49億円)を稼ぎ出し、常識を超えた金遣いで世間を驚かせた。すべてを手に入れ、“ウォール街のウルフ”と呼ばれた男にはしかし、ダイナミックな成功以上にセンセーショナルな破滅が待っていた――。

スコセッシ×ディカプリオ
ハリウッドのゴールデン・タッグが贈る、
仰天・興奮・衝撃のエンタテインメント!

pic ウォール街には、金にまつわる豪快な逸話がいくつも転がっているが、なかでも特別スケールの大きな話がある。26歳で証券会社を設立、年収4900万ドルを稼ぎ出し、10年間の栄光の果てに、36歳で楽園を追放された男、ジョーダン・ベルフォートの物語だ。成功、放蕩、破滅――そのすべてにおいて彼は、いまだ誰も超えられない破格の伝説を打ち立てた。

そんなベルフォートの半生を映画化したのは、数々の傑作を生み出してきた巨匠マーティン・スコセッシだ。そして監督がこの過激なキャラクターに指名したのは、5度目のタッグとなるレオナルド・ディカプリオ。観る者の心をとらえて離さない強烈なテーマに挑み続けた彼らの新たな問題作が誕生した。

学歴もコネもないのに、どうやってのしあがったのか? 周囲を熱狂させ、人々の<欲望>を巨額の<カネ>に換えた魅力とは? そして、すべてを手に入れた男が頂点から転がり落ちたその理由とは? 常識と良識は一時オフ、“ヤバすぎる人生”を十二分に味わえる180分が幕を開ける!

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