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harmony korine

監督・脚本■ハーモニー・コリン

1973年1月4日生まれ。テネシー州ナッシュビルやニューヨークで育つ。父親はドキュメンタリー映画製作者。映画監督、プロデューサー、脚本家、作家である。

95年、伝説の写真家・映画監督であるラリー・クラーク監督作『KIDS/キッズ』の脚本を19歳で手掛け、初めて注目を浴びた。マンハッタンに住むセックスとドラッグにまみれた少年少女たちの24時間に焦点をあてたハーモニーは、バランスが崩れたアメリカの若者たちの姿を描き、その早熟な才能に世界が驚愕した。

監督デビューを果たした『ガンモ』(97)では、アメリカ中部のホワイトトラッシュコミュニティを独創的な視点で描き出し、批評家や若者たちから絶大なる支持を得た。その後、統合失調症の若者の物語『ジュリアン』(99)を撮った後、しばらく世界中を転々とする生活を送る。

2007年には生まれ故郷のナッシュビルに戻り、インパーソネーターを主人公にした『ミスター・ロンリー』を監督。続いてよりコンセプチュアルな『Trash Humpers』(09)はトロント国際映画祭でプレミア上映され、2009年11月のコペンハーゲン・ドキュメンタリー国際映画祭では主要なCPH:DOX賞を受賞した。

2012年には四次元をテーマにしたオムニバス作品『フォース・ディメンション』に参加し、ヴァル・キルマー演じる自己啓発講師が登場する『Lotus Community Workshop』を手がけた。その他、キャット・パワーやザ・ブラック・キーズら、アーティストのミュージック・ビデオを数多く監督している。

俳優として『KIDS/キッズ』にカメオ出演したほか、『グッド・ウィル・ハンティング』や『ラストデイズ』にも出演している。クロエ・セヴィニーとは公私ともに長年パートナーであったが、現在は女優のレイチェル・コリンと結婚し、ひとり娘と共にナッシュビルに住んでいる。

filmography

・KIDS/キッズ(1995) 
・ガンモ(1997)監督/脚本  
・ジュリアン (1999)監督/脚本
・KEN PARK ケン パーク(2002)脚本  
・ラストデイズ(2005)出演  
・ミスター・ロンリー(2007)監督/脚本 
・ビューティフル・ルーザーズ(2008)出演
・トラッシュ・ハンパーズ(未・2009)
・スプリング・ブレイカーズ(2012)監督/脚本

他短編など多数


WHO THE HELL IS HARMONY?

ラリー・クラーク監督作品『KIDS/キッズ』の脚本家としてセンセーショナルなデビューを飾った時、彼は19歳。ストリートからひょいと飛び出してきたような、小柄で、いかにもナイーブといった風貌の少年だった。いつも酔っ払っているかハイになっていて、落ち着きが無く挙動不審で、膝をパタパタ動かし、話していることは支離滅裂だった(本人曰く「子供(KID)だったから」)。

けれどそれが当時のハーモニーで、彼の創造性は驚異的で、その意志は確固たるものだった。少年少女たちが身投げする愉快で残酷な青春をざっくり切ってよこしたような乱暴さは、リアルでRAWな痛みを私たちに分け与えた。初監督作『ガンモ』で寄せ集められた幾多のイメージの断片――抽象的・隠喩的な出来事と本物のホワイトトラッシュたち、性、暴力、恋、奇形、その他あらゆる方向から入り乱れる映像と物語のコラージュ――は殺伐として、ある意味では突き抜けてピュアで、閃光をあげて爆発し、人々の脳みそを焦がしていった。こうして異才を発揮したハーモニーは、名監督ヴェルナー・ヘルツォークを俳優に起用した『ジュリアン』を最後に、長年のミューズだったクロエ・セヴィニーと別れ、ぱったりと表舞台から姿を消す。

“世の中にあるのは型にはまった映画ばかりだ。
映画を観終わった後に思い出す登場人物やある特定のシーン、
それだけを集めたような映画を撮りたかった。
まだ誰も観たことのない、新しい映画だよ。”(※1)

8年振りの復帰作となった『ミスター・ロンリー』では、随分と大人びた顔を見せたハーモニー。ヒリヒリするほど優しく、今にも泣き出しそうな、はちきれんばかりの繊細な感情を詰め込んだ物語は、どのシーンを切り取っても美しく、台詞は真珠のように輝いた。更に今回の最新作『スプリング・ブレイカーズ』で、彼が新たなステージに降り立ったことは決定的になった。初っ端から、これまでとは比べ物にならないスケールと解放感、研ぎ澄まされた平衡感覚に驚いたファンは多かっただろう。「いつかシネコンにかかるような映画を撮ってみたいと思っていた」とハーモニーが語る通り、彼にとって初めてのメインストリーム・ムービーとなっただけでなく、彼は自身の立ち位置を完全に映画の外に移してみせた。「スプリング・ブレイク(春休み)」を謳歌する若者たち、ドラッグ、アルコール、セックス、暴力、エトセトラ、エトセトラ。以前なら、彼が描いたのは自分と同じ、その肉体や感情を分かち合うことのできた若者たちの姿であったはずだ。ところが今、半裸で乱痴気騒ぎを繰り広げる群衆の中に彼の姿は、ない。そのことが、衝撃的な事件にすら思えた。ハーモニーが大人になっただなんて。

“解釈の仕方に正しいも間違いもなくて、全部パーフェクトなんだ。
誰がなんて言うか、誰かが腹を立てるんじゃないかなんて、
怖がってたら生きていけない。
僕は僕が出来得る限り最高の映画を作る。
本質的で、美しくて、人々に影響を与える映画だ。”(※2)

極彩色にスパークする青春、狂喜狂乱する若者たち。その上を横切るハーモニーの視線は鋭い。彼は部外者であり、若者たちを見降ろし、画面のバランスを取り、コントロールする。その中には確かにまだハーモニーらしい気配が感じられるような気もする。無茶苦茶で、そのくせ純粋で、チャーミングな…それを感じることはノスタルジーにも似た何かだけれど、彼の不在を埋めてくれるわけではない(そう思うと寂しい。「ハーモニーという少年がいた世界」はもう戻らないのか?)。しかし同時に、ラリっていた青白い少年が大人になり、父になり、シラフになり、意識を取戻し、いよいよ本領を発揮しはじめたヤバさ・恐ろしさみたいなものも、半端じゃなく感じられて鳥肌が立つ。インディペンデントの匂いとその気骨を残しながらメインストリームへと突き抜けるハイパー・ニュー・バージョンのハーモニー・コリン。彼がまだ進化の最中にあることは明らかで、その先には底なしの、驚くべき未来が待っているのかもしれない。

“平凡なものを作るくらいなら、そもそも作りはじめないほうがいい。
見たことのないものを、見たことのない方法で見せて欲しいんだ。
同じものを何度も繰り返し見せるのはやめてくれ。
もううんざりなんだから。”(※3)

天才少年から、若き巨匠へ。
ハーモニー・コリンよ、永遠なれ<FOREVER, BITCHES!>。

(ザジ)

(※1)映画『ガンモ』について、トーク番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』より (※2)映画『スプリング・ブレイカーズ』について、ヴェネチア国際映画祭の記者会見より (※3)監督や脚本家を目指す人へのアドバイス、BAFTA Guruのインタビューより

ミスター・ロンリー
MISTER LONELY
pic(2007年 イギリス・フランス 111分 35mm シネスコ/SRD)
2013年9月14日から9月20日まで上映
■監督・脚本 ハーモニー・コリン
■脚本 アビ・コリン
■撮影 マルセル・ザイスキンド
■編集 ポール・ズイカー/ヴァルディス・オスカードゥティル
■音楽 ジェイソン・スペースマン/ザ・サン・シティ・ガールズ

■出演 ディエゴ・ルナ/サマンサ・モートン/ドニ・ラヴァン/ヴェルナー・ヘルツォーク/レオス・カラックス/ジェームズ・フォックス/ジョセフ・モーガン/アニタ・パレンバーグ/レイチェル・コリン

■第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品

マイケル・ジャクソンでしか生きられない僕が出逢ったのは、
マリリン・モンローでしか存在できない君

picパリの街角で今日もマイケル・ジャクソンのモノマネ・パフォーマンスを披露する男がいる。名前は、マイケル。職業もマイケル。食事の時も眠る時も“24時間365日マイケル”なのだ。そんなマイケルがある日、マリリン・モンローとして生きている美しい女性と出会う。スコットランドの古城でモノマネ芸人たちと共同生活をしている彼女は、彼らと“地上最大のショー”を計画していた。

ひと目でマリリンに心を奪われたマイケルは、彼女に誘われるままにチャップリンやマドンナ、ジェームズ・ディーンやエリザベス女王などが待つユートピアに旅立つ。それが、初めての恋に突き動かされて、ほんとうの自分を探す旅になるなんて、思いもせずに…。

かりものの人生の、ほんものの幸せ。
すこし不思議でかなり不器用、
愛おしいほどの純粋なラブストーリー

19歳の若さで書いた『KIDS/キッズ』の脚本、初監督作『ガンモ』、続く『ジュリアン』で世界中にセンセーションを巻き起こしながらも、映画界から忽然と姿を消してしまったハーモニー・コリン。しかし8年後の2007年、若き天才は復活した。インパーソネーター(モノマネ・パフォーマー)という意表を突いた設定、ファンタジックなストーリーと予想外な結末、そして“パラシュートなしでスカイダイビングする尼僧たち”という隠しストーリー。カンヌ映画祭ある視点部門で上映されたこの驚きに満ちた新作は、熱狂的な拍手に包まれた。

主人公マイケルを演じるのは、『天国の口、終りの楽園。』のディエゴ・ルナ。マリリンに『ギター弾きの恋』のサマンサ・モートン。マリリンの夫チャップリンには『ポンヌフの恋人』ほかレオス・カラックス監督作にかかせないドニ・ラヴァン。さらにはカラックス監督本人や、ドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督まで出演している。

自分に自信が持てないために他人を演じて生きてきたマイケルが、恋をしたことでぶつかる壁。「ボクって誰?」、「他人を演じている自分がほんとうの自分?」――そんなマイケルのピュアでロンリーな姿は、時に私たち自身と重なり、胸に突き刺さる。



スプリング・ブレイカーズ
SPRING BREAKERS
pic(2012年 アメリカ 93分 dcp R15+ シネスコ)
2013年9月14日から9月20日まで上映
■監督・脚本 ハーモニー・コリン
■撮影 ブノワ・デビエ
■編集 ダグラス・クライズ
■音楽 スクリレックス/クリフ・マルティネス

■出演 ジェームズ・フランコ/ヴァネッサ・ハジェンズ/セレーナ・ゴメス/アシュレイ・ベンソン/レイチェル・コリン

■第69回ヴェネチア国際映画祭コンペ部門正式出品/トロント国際映画祭正式出品

青春なんて、消耗品。

pic女子大生のフェイス、キャンディ、ブリット、コティは、刺激の無い大学生活に心底ウンザリしていた。4人は目前に迫った“スプリング・ブレイク”を控え、退屈な日常を変えるためにフロリダ旅行に出かけようと盛り上がる。勢いに乗った彼女達は強盗で資金を作ろうと目論み、計画は思った以上に上手く進んだ。

待ちに待った“スプリング・ブレイク”がやってきた! 美しいビーチとクールな音楽、そしてカッコイイ男の子たち! 退屈から解放され、やっと自分達の居場所を見出だした4人だが、ドラッグとアルコールだらけのパーティ現場を警察に押さえられ、収監されてしまう。そんなピンチを、エイリアンと名乗る謎の男が突然現れ助けてくれた。その出会いが、彼女たちの運命を大きく変えていく――。

映画史上最も過激な春休み!
ハーモニー・コリンの最新作は
極彩色の衝撃エンターテインメント!!

pic刺激を求める女の子達のリアルな姿をポップ&スタイリッシュに描き、各国の映画祭で話題をさらったハーモニー・コリン監督の最新作が遂に公開! 疾走する女子大生―“スプリング・ブレイカーズ”に、ディズニーアイドルのセレーナ・ゴメスとヴァネッサ・ハジェンズ、「プリティ・リトル・ライアーズ」のアシュレイ・ベイソン、『ミスター・ロンリー』以降ハーモニー作品常連で彼のパートナーでもあるレイチェル・コリンなど、意外性満点の旬な女優陣が、ほぼ全編水着姿で体当たりの演技を見せる!

また、『127時間』『オズ はじまりの戦い』など、今ハリウッドでノリにノッている実力派ジェームズ・フランコが、銀歯とコーンロウ頭の衝撃的バッドボーイ役で新境地を切り開いた。さらにグラミー賞受賞の最旬アーティスト、スクリレックスが楽曲を提供、その爆音エレクトロビートがホットなオープニングを飾る。

ティーンエイジャーたちの弾ける若さと激情、フロリダビーチの陽光が孕む光と影。ハイテンションで過激、でもどこかノスタルジックな“スプリング・ブレイク”は、日常に辟易するあなたの為の春休みでもある。さぁ、ハーモニー・コリンが誘う危険なパラダイスに出かけよう!



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