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『私自身には、いつも「なるようにしかならない」と思う自分がいたから、なんとかやってこれたのではないかと、思います。』 by武良布枝
『さいごに、ちゃんと帰ってきました。いい男でした。』by西原理恵子

女って強い。この二本を観てそう思った。
家庭における大黒柱というと一般的に男性が多いが、それは女性の度量の広さで決まると思う。

『ゲゲゲの女房』の水木しげると武良布枝。
89歳にして新連載をスタートさせるエネルギーもさることながら、その明るく達観した性格には誰もが魅了されてしまう。
そんな水木しげるのズバ抜けた才能と努力を一番近くで見守り、並走し続けた妻・布枝もなかなかの大物。
「なるようにしかならない」と言ってはいるものの、その中でできる最大限の努力をしてきたからこそ、
今日に至るまでの漫画家・水木しげるを、50年間も支え続けてこられたのだろう。

一方、『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』の鴨志田穣と西原理恵子。
夫婦の前に立ちはだかる「アルコール依存症」という強敵から、西原理恵子は逃げなかった。
それどころか、そのことを漫画にして笑いとばしてしまっている。惜し気もなく、自分や家族のかっこわるい部分をさらけ出す。
それって強くなきゃできないことだ。西原理恵子は鴨志田穣の全てを受け入れ、向き合い続けた。
血のつながらない赤の他人の二人が、長年連れ添うと顔や雰囲気が似てきたりすることがあるが、
それはきっとお互いが共鳴し合っている証拠なのかもしれない。
夫婦っておもしろい。

そして、やっぱり女って強い。

(ぐり)

ゲゲゲの女房
(2010年 日本 119分 ビスタ/SR) pic 2011年5月28日から6月3日まで上映
開映時間
■監督 鈴木卓爾
■原作 武良布枝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社刊)
■撮影 たむらまさき
■音楽 鈴木慶一

■出演 吹石一恵/宮藤官九郎/坂井真紀/村上淳/宮ア将/徳井優/南果歩

ただひたすら漫画を描いた。ただひたすらそばにいた。

picお見合いから5日後、お互いの目を合わせられないほど、ぎこちなく始まった布枝としげるの結婚生活。お金がないから、ふたりにとっては食パンの耳も野道の草木も、大切な食料源。食事のあとすぐに机に向かい、夜深くまで漫画を描き続けるしげるとの生活に、戸惑いを隠せない布枝。

ある日、布枝はしげるの使いで出版社を訪れるが、手渡された原稿料は約束の半分。しげるの描く漫画は暗くて売れないという。漫画の良し悪しも、しげるのことすらもまだよくわからなかったが、布枝の心には悔しさがこみ上げてくる。それでもしげるは、ただひたすら飄々と、妖怪漫画を描き続けるのだった。「これほど努力しているのだから、世間に認められないまま終わるはずがない。」強い感情が、布枝の心に少しずつ芽生え始めていた…。

心温まる“夫婦創世記”、待望の映画化。     

pic本作の原作である『ゲゲゲの女房』は、漫画家水木しげるの妻・布枝が、半世紀以上の間、苦楽を共にしたしげるとの生活を綴った自伝エッセイである。布枝を演じたのは、高い演技力を評価される吹石一恵。昭和の貧しい時代にたくましく生きる姿を瑞々しく凛と演じきった。水木しげる役には、舞台、映画、ドラマで脚本家、演出家としても活躍し続けている宮藤官九郎。同じ“物を創る人間”だからこその佇まいを醸し出している。

pic監督は俳優としても活躍する、『私は猫ストーカー』の鈴木卓爾。水木しげる作品のように、日常に潜む妖怪を愉快に登場させ、夫婦の歩みに明るさを加えた独特の世界観を生み出した。昭和の懐かしい風景と共に紡がれていくしげる・布枝の姿は、観る者の心を柔らかく包み込み、誰かと共に生きることへの問いを、温かくも力強く投げかける――。


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酔いがさめたら、うちに帰ろう
(2010年 日本 118分 ビスタ/SRD) pic 2011年5月28日から6月3日まで上映
開映時間
■監督・脚本・編集 東陽一
■原作 鴨志田穣『酔いがさめたら、うちに帰ろう』(スターツ出版刊)
■音楽 パスカルズ/タブラトゥーラ
■主題歌 忌野清志郎『誇り高く生きよう』

■出演 浅野忠信/永作博美/香川美子/市川実日子/光石研/利重剛

やっとみつけた、どん底での希望。それは“心の居場所”に帰ること。

「来週は素面で家族と会うのです。」と言いながらウォッカを飲み、血を吐いて気絶した戦場カメラマンの塚原安行。足早に駆けつけ「大丈夫、まだ死なないよ。」と、彼の頬をさする、人気漫画化の園田由紀。ふたりは結婚し、子供にも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚していた。

pic 10回の吐血、入院、暴力…断酒できず、自身も家族も疲れ果て、安行は嫌々ながらもアルコール病棟に入院する。しかしそこでの風変わりな医者や入院患者たちとの生活は、不思議と安堵感を与えてくれるのだった。すべてを受け入れる妻の覚悟と家族の深い愛情に支えられ、心も体力も回復してゆくが、安行の身体はもうひとつの大きな病気をかかえていた…。

大人のための心揺さぶられる名作
家族の絆がつむぎだす、“大きな愛の物語”

シングルマン 漫画家・西原理恵子の元夫で、戦場カメラマンの鴨志田穣の自伝的小説を映画化した本作。ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した『絵の中のぼくの村』の巨匠、東陽一が原作に惚れ込んでメガホンを取った。

出演は、監督に「このふたりを迎え入れたことは、監督として最高に幸せ」と言わしめた浅野忠信と永作博美。自分勝手だけど憎めない主人公を、日本映画界を代表する名優・浅野忠信が演じきった。由紀役の永作博美は、“母”であり“妻”であることの、強さと弱さを見事に体現。そのほか、香川美子、市川実日子、光石研、利重剛など実力派俳優たちが脇を固め、より作品に深みを与えている。家族が一緒に生きる意味を教えてくれる温かい感動作がここに誕生した。



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