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ゴダールの映画ってすごい。
何がすごいって言葉が全然追いついてこない。
音楽の旋律が、絵画の色味が、詩の余韻が、説明不可能なようにゴダールの映画を語るのは難しい。
だけどゴダールの映画は音楽的で絵画的で詩的で、そして映画的だ。要するに素晴らしい。

今回上映する二作は、ゴダールが商業映画に復帰した後の作品。
公私に渡るパートナー、アンナ・カリーナと次々と名作を紡ぎだした<ヌーヴェル・ヴァーグ>時代、
政治色を強め<ジガ・ヴェルトフ>集団として作品を制作した時代を経て、
光、色彩、音、引用が乱舞するアヴァン・ポップな作品を生み出し続ける現在のゴダール。

『映画史特別編 選ばれた瞬間』では、古今東西の、ゴダールが、
そして私たちが愛した映画が断片となって瞬く間に通過して行く。
編集台の前に着座するゴダール。
監督の工房から生まれる豊饒な映像とリズムを私たちはただ感じればいい。

『ゴダール・ソシアリスム』は、2010年に公開された監督最新作。
引用で編まれたシンフォニー形式のこの作品は、デジタル時代の映画の新たな指針となるはず。
息を呑むような美しい海のイメージから、ウェブから拾ってこられた映像まで、様々なデジタル・イメージが交錯する。
そのデジタルな映像と音はノイズにまみれながらも(まみれているから?)美しく、
前後左右から唐突に出力するサウンドはとてつもなく耳に刺激的だ。

DJのサンプリングやリミックスのような感覚でカットアップされた膨大な量の映画と音響。
監督の緻密な計算?それとも感性?いずれにしても"歪な切り貼り"はたまらなく心地いい。
ゴダールが引用の技巧を極限まで振ったと言える両作品は必見。

ヌーヴェル・ヴァーグから半世紀が過ぎ、80歳となったジャン=リュック・ゴダール監督。
監督は今なお、映画の最前線を突き進み続け、
作品は常に若々しく、アナーキーで、そしてとんでもなく魅力的。

両作品を観終わった後、きっとあなたは言葉を奪われてしまう。
そして"やっぱりゴダールの映画ってすごい"と思うはず。
劇場という空間でしか味わえないゴダール作品の妙味。
"ゴダールを観る"という幸福/煩悶をぜひとも早稲田松竹で体験してみてはいかがでしょうか。    (ミスター)

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映画史特別編 選ばれた瞬間
LES MOMENTS CHOISIS DES HISTOIRE(S) DU CINEMA
(2005年 フランス 80分 SD/SRD) 2011年8月20日から8月26日まで上映
■監督・編集 ジャン=リュック・ゴダール
■音楽 アルヴォ・ペルト/ヒンデミット/ベートーヴェン/バルトーク/シューベルトほか

映画誕生から未来へ
ゴダールのモニュメンタルなライフワーク

ゴダールが1988年から1998年にかけて製作した約5時間の大作「映画史」(全8章)。ゴダールが見た、愛した、古今の膨大な数の映画をアナログのフィルムとデジタルのビデオを駆使して完成。1999年夏に毎週1作ずつ8週間にわたって行なった放映はヨーロッパで90年代最大の文化的事件と呼ばれた。

しかしデジタルビデオ作品であるため、劇場上映されたのは日本だけで、それも限られた機会だけだった。本作「選ばれた瞬間」は1時間20分の劇場公開用作品として35ミリフィルムで完成した作品。ゴダール自身の新たな編集で、新たな意味をになった「選ばれた瞬間」が流麗な美しさで展開する。


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ゴダール・ソシアリスム
FILM SOCIALISME
(2010年 スイス/フランス 102分 ビスタ/SR) 2011年8月20日から8月26日まで上映
■監督・脚本 ジャン=リュック・ゴダール
■撮影 ファブリス・アラーニョ/ポール・グリヴァス
■サウンド フランソワ・ミュジー/ガブリエル・アフネール

■出演 カトリーヌ・タンヴィェ/マリーヌ・バタジア/ジャン=マルク・ステーレ/キュリヴェール・エック/パティ・スミス/ロベール・マルビエ

自由は高くつく!
現代ヨーロッパの映像美と詩の極地で描くゴダール最新作!

picゴダール最後の長編劇映画か、とル・モンド紙で騒然たる話題となった本作は2010年発表の最新作。カンヌ映画祭に登場し、冒頭での海の凄まじい映像の一瞬から、全編を疾走する映像美、サウンド、みなぎる詩の活力でカンヌを圧倒した。

3楽章のシンフォニー構成。第1楽章は、<こんな事ども>。地中海を周遊するゴールデン・ウェブ号を舞台に、スペイン内戦でなくなった黄金をめぐるミステリーを軸に複数のストーリーラインを展開。第2楽章は、<どこへ行く、ヨーロッパ>。フランスの片田舎の8月4日、4人家族の一家と動物たちが主役。第3楽章、<われら人類>は人類の歴史を築いた6つの場を訪問。それは第1楽章でゴールデン・ウェブ号がたどっていた航路だ。

pic本作には箴言や警句があふれ、ゴダールお得意の引用がちりばめられている。セリフでさえも殆ど全てが引用という綱渡りの極限のような作り方。「勝手にしやがれ」でジーン・セバーグがつぶやくフォークナーや、「気狂いピエロ」でのピカソ、「映画史」ではすべてが引用。そして「ソシアリスム」ではついに、引用という制限のなかで新たな創作を行う挑戦を劇映画で果たし、ポエジーを未踏の高みで開花させている。


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