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私が子供の時、“風船おじさん”という人がテレビを賑わしました。
皆が必死で止めに入る中、笑顔のままアメリカへ向けて風船に乗って飛び立ったおじさん。
あの時の衝撃の映像は忘れられません。

私の心の中では、風船おじさんは今でも空を飛び続けています。
しかし現実にはどこへ行ったのか分からない。
飛んだ、その後…。

早稲田松竹では去年、『赤い風船』を上映しました。この作品は実写で撮られています。
少年はたくさんの風船に導かれて、ふわふわっと空へ飛んで行きました。
そこには詩情があり、私たちに深い余韻をもたらしました。
ですが、悲しい…。

そこには風船に象徴された、「いつか消えてしまうもの」という、命の儚さが描かれていたからだと思うのです。
そういう美しい詩もあるし、“夢を与える”
そんな、飛んだ後を描いた詩もあっていい。

「アニメーションに不幸な結末なし」と言っていた人がいました。
一概にはそう言い切れないでしょうが、アニメーションという表現には、“希望”という要素が常に含まれている。
そんな印象を受けます。

無機物である絵を動かすことによって、命を与える。アニメーションの基礎を成す、原初的な衝動。
その想いはアニメーションの歴史の中で、脈々と引き継がれています。

『バッタ君 町に行く』で、バッタ君は見事な“バッタおどり”を披露します。
この映画が作られてから70年も経っているのに、新鮮な驚きと発見があります。
そして、何よりも楽しい。命のなかったものが、命をなす。
アニメーション作りが“希望”とリンクする。その感動がまざまざと伝わってきます。

現実の世界では描けないことを表現すること。それもアニメーションの大きな特徴です。
『カールじいさんの空飛ぶ家』で、カールじいさんは家ごと空へ飛んで行きます。
子供の時からの夢をかなえるために。

飛んだ、その後…。
そこから、カールじいさんの夢は始まって、アニメーションはその手助けをします。
“夢を与える”
アニメーションが誘うその感動を、今回は胸いっぱい受けとめてみましょう。

(mako)


バッタ君 町に行く
MR. BUG GOES TO TOWN
(1941年 アメリカ 77分 字幕上映 SD/MONO) pic 2010年8月14日から8月20日まで上映
■監督 デイヴ・フライシャー
■製作 マックス・フライシャー
■原作 デイヴ・フライシャー/ダン・ゴードン/テッド・ピアース/イシドア・スパーバー
■脚本 ダン・ゴードン/テッド・ピアース/イシドア・スパーバー/ウィリアム・ターナー/カール・マイヤー/グレアム・プレース/ボッブ・ウィッカーシャム/キャル・ハワード

■声の出演 ポーリン・ロス/スタン・フリード/ジャック・マーサー/テッド・ピアース/カール・メイヤー

時代をこえる本物の面白さ、
手描きアニメーションの強烈なエネルギーで描かれた
小さくか弱きものたちの、大きく力強い信念!

pic都会の真ん中に、虫たちが暮らす草むらがあった。しかし囲いが壊れたことで人間が侵入し、虫たちは危険にさらされ、日々の生活に安穏としてはいられなくなっていた。そんなある日、恋人ハニーの元に長旅を終えて帰ってきたバッタのホピティは、草むらの惨状を知り、安全な土地への引越しを提案。かくして、人間の足元で、小さな虫たちの苦難の引越しが始まった。安心して住めるお家はどこ――?

『ベティ・ブープ』『ポパイ』
『スーパーマン』を作ったフライシャー兄弟

pic1930年代から40年代にかけて、アメリカのアニメーションは黄金期を迎える。他のアニメーション会社がディズニーに追従する中、フライシャー・スタジオはディズニー作品とは違った、都会的で大衆的な独自の作風を確立する。こうして生まれた「ベティ・ブープ」や「ポパイ」は、世界中で未だに人気のキャラクターだ。『バッタ君 町に行く』にもこうした要素は反映され、おとぎ話ではない現代的でロマンチックなストーリーの創造に成功している。さらに、今ではかえって新鮮に思われる手描きアニメーションの綿密さは、一挙一動まで私たちの視線を捉えて離さない。驚くほどの躍動感とエネルギーに満ちた映像を、是非スクリーンでご覧いただきたい。


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カールじいさんの空飛ぶ家
UP
(2009年 アメリカ 103分 2D・吹替上映 ビスタ/SRD) 2010年8月14日から8月20日まで上映
■監督 ピート・ドクター
■共同監督 ボブ・ピーターソン
■原案 ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン/トーマス・マッカーシー
■脚本 ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン
■音楽 マイケル・ジアッキノ

■日本語版声の出演 飯塚昭三/立川大樹/大木民夫/松元環季/吉永拓斗/松本保典

■アカデミー賞作曲賞・長編アニメ賞/ゴールデン・グローブ音楽賞・アニメーション作品賞/英国アカデミー賞作曲賞・アニメーション賞/放送映画批評家協会賞音楽賞・長編アニメ賞

※上映時間の103分には、同時上映の『晴れ ときどき くもり』を含みます。

★同時上映
晴れ ときどき くもり
PARTLY CLOUDY(2009年 アメリカ)
■監督 ピーター・ソーン
<あらすじ>あらゆる動物の赤ちゃんは、コウノトリが運んでいます。では、コウノトリは一体どこから赤ちゃんを連れてくるの?その秘密は、なんと雲の中に…。

楽しい時、つらい時、うれしい時、悲しい時、
そこにはいつも“この家”があった
そこには、いつも君がいた――

picカール・フレドリクセンは78歳のおじいさん。風船売りの仕事も引退し、亡き妻エリーとの思い出がつまった家で、一人きりで暮らしていた。ある日、カールはトラブルを起こし、老人ホームに強制収容されることに。その時、彼はエリーとの「いつか南米を旅行しよう」という約束を果たすため、人生最初で最後の冒険の旅に出ることを決意する。大切な我が家に無数の風船をつけ空へと旅立ったカールじいさん。目指すは南米の秘境、伝説の場所、パラダイスの滝!ところが、思いもよらぬ運命がカールじいさんを待ち受けていた…!

これで泣かないはずがない!
数々の伝説を生んだピクサーが満を持しておくる
本物の感情が心に響く最高傑作!

空を飛びたい。それは、誰もが一度は抱いたことのある夢。本作は、その夢を大きくユニークに膨らませ、何万個もの色鮮やかな風船をつけて家ごと空に旅立たせてしまった。映画を輝かせる主人公・カールじいさんは、特別な才能があるわけでもない、普通の老人。だが、ピクサー史上最も複雑な心を持ち、最も存在感を感じさせる登場人物だ。頑固で気難し屋、そして、最愛の妻エリーとの思い出を大切に胸に抱いているロマンチスト。そんな彼の壮大な冒険が描きだすのは、人生そのもの。そして、愛だ。

監督、脚本を担ったのは、『モンスターズ・インク』を監督したピート・ドクター。共同監督、共同脚本に『ファインディング・ニモ』の脚本を手掛けたボブ・ピーターソン。2つの感動作を創りあげた才能がタッグを組んだ本作は、アニメーション映画として史上初めてカンヌ国際映画祭のオープニング・ナイトを飾る快挙を達成。さらに、全米では初登場1位のメガヒットを記録し、アカデミー賞作曲賞・作品賞に輝いた。子供から大人まで全ての人々の胸を熱くする、ピクサー史上最高傑作!



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